絞り染めの普及、研究に長年尽力する染め物作家 安藤 宏子さん 鵠沼藤が谷在住 78歳
絞り染め無限の可能性
○…布の一部を縛るなどして圧力をかけ模様を作り出す染の技法「絞り染め」に魅せられ、40年超。絞り染めの教科書『絞り染め大全』なども執筆し、国際的な染織展にも作品を依頼される人気作家だが「とにかく染めが楽しくて夢中になってただけなのよ」と恥ずかしげに微笑む。
○…大分県出身。家政学を学ぶ中で染めの美しさを知り製作を開始。卒業式に自身で染め上げたバラ柄の着物で出席したのが思い出深い。愛知大学に勤務し染色研究をする中、転機が訪れる。偶然訪れた有松・鳴海絞りの職人町で「『豊後絞り』の名を”知ってしまった”」。自身の故郷の地名を冠する伝統技法で、各地の染め技術に影響を与えながら、明治以降は廃れ、誰も知る者がいない幻の染めとなっていた。「染織は見て学べの世界。知る人がいなくなれば消えてしまう」。以降、結婚・出産を経て主婦となってからも在野で技術復活の研究を続け、その伝播を追い遠くシルクロードやペルーにも足を運んだ。技術確立と共に普及を進め、2000年代に入り地域の文化遺産に認定。遂に伝統を復活させた。
○…名古屋のアトリエを拠点に活動を続けてきたが、病後の養生で訪れた江の島を気に入り、越して約10年になる。「潮風がいいのかしら、呼吸が楽になる街」。部屋に飾った自筆の風景スケッチは、夫婦2人だけのための美術展だ。
○…主催する絞り染め教室「遊草会」の生徒は延べ3千人を超える。作品制作は伝統にならい全て手作業で行う一方、デザインなどに現代の感性も多く取り入れる。「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る。絞り染めは無限の可能性を秘めている。アイデアが溢れてきて年を取る暇もないわ」と朗らかに笑った。
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