料理対決漫画の金字塔「包丁人味平」の作画を手掛けるなど、数々の名作を世に送り出した漫画家・ビッグ錠(佃龍二)さん(81)。湘南台に居を構え約半世紀。近年は「育ててもらった街に恩返しを」と、湘南台駅地下広場で「マンガ展」を開催し、飲食店マップ制作に協力するなど、商店街の活性化に尽力している。
湘南台に50年「街に活力を」
「街を活気付けたい。その思いで地元の皆さんと協力して始めたんだ」。駅地下広場に代表作「味平」の複製画100点がずらり。集大成とも言える5回目の展示を3月下旬に開いた。近隣の飲食店の店内には、「巨人の星」で知られる川崎のぼるさんら「長年の仲間たち」の作品も展示。「周りの商店街にも足を運んでもらわなきゃ、商売は盛り上がらないでしょ」
「商店街グルメマップ」への協力は3年目。自ら居酒屋やカフェを訪れて描いた店主の似顔絵を盛り込んだ。今回はコロナ禍の影響か、掲載店舗が減り余白が生まれた。そこには渾身の一コマ漫画を描き下ろす。
「レストランで料理の撮影に夢中になる家族と困り顔のウエイトレス」や「湘南台をPRしながら笑顔でラーメン屋を訪れる女性たち」。キャラクターの豊かな表情と添えた台詞に、自然と読み手の頭の中で物語が紡がれる。作家人生で大切にしてきた「一コマをいかに面白く描くか」。情熱を余すことなく注いだ。
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大阪出身。実家が洋裁店で商店街の活気を肌で感じながら育った。高校時代に貸本漫画家としてデビュー。一時デザイナーとして広告会社に勤務し独立するも「もう一度漫画家で」と夢が再燃し上京。海に憧れ本鵠沼に住んだ。
その頃編集者に紹介された原作者・牛次郎さんとタッグを組み「釘師サブやん」がヒット。1973年に週刊少年ジャンプで連載を開始した「味平」で、当時無かった「料理漫画」のジャンルを確立させた。人気とともにアシスタントの人数が増え、田園情緒豊かな環境の湘南台に自宅兼仕事場を構えた。
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ヒット後は順風満帆かと思いきや作家生命が危ぶまれたことも。還暦を迎えた頃、長年の作画と締切との闘いに頸椎が悲鳴を上げた。座ることも、寝ながら描くこともできず。それでも妻の勧めでリハビリに通い続け回復。すると「もっと作画力を高めたい」と野心が生まれた。単身でニューヨークに1年間滞在し、日々道行く人をスケッチするなど新たな刺激を受け、現地で個展も開いた。
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尽力に対して商店街から贈られたのは感謝状と、「食い逃げ免除します」と印字された食事券。そのユーモアに「面白いこと考えるよね。自分もまだまだ負けちゃいられないな」。「さすがに漫画は飽きた」と冗談めかしつつ、趣味の演劇経験を生かし「味平ミュージカルをやってみたい。小気味良い包丁の音に合わせて下駄でタップなんていいな。もちろん湘南台で上演だよ」。にやりと笑い、飽くなき探究心を形にしていく。
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