偶然発見された「新品種」で藤沢の新たな名産品を――。
情報通信システム開発などを手掛ける(株)ショーナン(遠藤・慶應藤沢イノベーションビレッジ内)が、藤沢産のブドウ「メイヴ」でワインを造り、地域ブランド化を目指している。
きっかけは数年前、同社代表取締役の田中利忠さん(64)=二宮町在住=が会社の近隣住民の80代男性から相談を受けたこと。男性は20年間、趣味の一環として御所見の畑でブドウを育てていたが、高齢化に伴い譲り先を探していた。そこで農業法人でもあった同社に相談、2019年5月に引き渡した。
同年、ボランティアとともに栽培し、100kgを収穫。田中さんが運営に携わる北海道余市のワイナリーで委託醸造、同名の赤ワインが完成した。ハーフボトル150本の初出荷の際、ラベルにブドウの品種名を表記する必要があり、田中さんが80代男性に尋ねると「品種は分からないまま育てていた」との回答。
そこで財務省の管轄する「酒類総合研究所」へDNA鑑定を依頼。結果は「データーベース上に品種を特定できない」だった。田中さんは「まさか新品種だとは予想外。藤沢の地で見つかったのは大きな地域資源になる」と考え、「湘南ワイン・プロジェクト」と銘打ち、本腰を入れて開発を開始した。
「メイヴ」をブランド化
「メイヴ」の由来は、80代男性のハーフの孫娘のMaeveさんの名前にちなんだ。田中さんによると味は軽やかで甘味が強く、肉だけでなく魚料理に合うという。「赤だけれど乾杯酒にもおすすめ。私はお酒をたしなむのが好きだが弱いので少しにとどめている」とのこと。
昨年は、天候不良などから30kgの収穫にとどまり、一般販売はせず栽培に協力したボランティアに配布した。12月には大手酒類メーカーなどが所属する「日本ブドウ・ワイン学会」で、新品種の発見と特徴を報告するなど、専門業界からも注目されているという。
さらに北海道や沖縄などの農家の協力を仰ぎ、温度や湿度が異なる場所で苗を栽培。マイナス30度の環境でも無農薬栽培が可能なことが分かり、今後は全国各地で栽培していくという。
今年は200kgの収穫を目指し、藤沢、茅ヶ崎、寒川の耕作放棄地を借り計1万5000平方メートルで栽培する。今後は販売方法や3年後の市内でのワイン醸造所設立を検討。田中さんは「ブランド化を目指すとともに、飲食店や大学と連携して地域の新たな『宝』を育てていきたい」と語った。
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