喫煙が健康に与える影響は大きい。感染症対策の中でも、喫煙は肺に長期的で回復しにくいダメージを与え、肺炎のリスクを約３倍に高めると指摘されている。本紙では５月31日の「世界禁煙デー」に合わせ、市民の健康を守る藤沢三師会の医師、歯科医師、薬剤師にインタビューを実施。タバコの害とやめられない仕組み、どうすればやめられるのかについて詳しい話を聞いた。
正しい認識奪うニコチン
タバコの依存性は酒や麻薬よりも高いといわれる。医師の原田久さんは「タバコが体に悪いことを知らない喫煙者はいない。目の前に死の危険があっても手を出してしまうことは、勇気ではなく無謀」と説明する。
「吸えないストレスの方が体に悪いという人もいるが、この正しい認識を奪うこと自体がニコチンの特徴」と話す。
ストレス解消は錯覚
ニコチンは脳の快楽物質に直接働きかけるため、「手軽にストレスを解消できる」と「錯覚しやすい」という。代価は大きく「食事」「趣味」「家族や友人との交流」などほかの快楽を得る手段を奪ってしまう。得られる快楽も次第に麻痺し、吸っていないと平常心を保てなくなる危険があるのだ。
「タバコによって得られる快楽は、実は平常時より低く、火傷をした場所を冷やすと気持ちいい、という感覚に近い」と警鐘を鳴らし「タバコにだまされないで。失うものは多く、得るものはない」と呼び掛ける。
歯と口にも影響３大有害物質
２００種類以上の有害物質が含まれるというタバコ。歯科医師の雨宮啓さんは「ニコチン、タール（ヤニ）、一酸化炭素は、歯や口にダメージを与える３大有害物質。歯周病を悪化させ、口腔がんなどのリスクを高める」という。
タバコを吸うと歯にヤニが付くが、これは煙に含まれるタールが原因。汚れや細菌はそのタールに付着しやすく、歯周病菌や虫歯菌にとって、それは隠れやすく棲みやすい環境になってしまう。
ニコチンで免疫力低下
歯を失う原因となる歯周病を悪化させる主犯格は「ニコチン」。雨宮さんは「タバコ中毒に陥れる有害物質。免疫機能を低下させるので、口の中の抵抗力が低下し、歯周病の攻撃を防ぐことができなくなる。タバコを吸う人は歯周病が悪化しやすく、治療の効果も上がりにくい」と説明。
また喫煙は、口腔がんや咽頭がんなどのリスクを上昇させる。「歯科医院でも禁煙相談を受け付けているので、相談してほしい」と話した。
正しい知識で依存症治療を
「禁煙を達成するために大切なのは、正しい知識と適切な治療」と呼びかけるのは薬剤師の関根寿樹さん。
現在国内で禁煙補助薬として扱われているニコチンガムやパッチは、少量のニコチンを体内供給することで、徐々に「タバコを吸いたい」という気持ちを失わせる。
医師の処方箋で手に入れるものと、薬局の禁煙相談で販売されるものがある。関根さんは「薬局でも薬を取り扱っているところがあるので相談して」と呼び掛ける。
子どもたちに「吸わせない」藤沢
「喫煙・受動喫煙対策には小中学校からの教育も大切。子どもから言われると吸わなくなる親もいる。家族で禁煙を支えて」と関根さん。
薬剤師は小中学校で「お薬教室」などを開き、タバコの害を子どもに伝える機会も多い。
「日本では受動喫煙により年間１万５千人が死亡し、超過医療費は３２００億円にも上るという報告もある。未来を担う子どもたちに禁煙や受動喫煙の害について知ってもらえるよう努力したい」と語った。
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