片瀬西浜・鵠沼海水浴場を開設する江の島海水浴場協同組合が今春、美しく快適で安全なビーチに与えられる国際認証「ブルーフラッグ」を取得した。環境やレジャーでも持続可能性が求められる中、認証にはどんな意義があるのか。取得をサポートしてきたNPO法人湘南ビジョン研究所理事長の片山清宏さん(46)の視点から読み解く。
10数年前、湘南エリアの海岸ごみに関する統計を見て愕然とした。
鵠沼に生まれ育ち、高校のときから地元の海でサーフィンに親しんだ。同時に「地元の海をきれいにしよう」とビーチクリーンを始め、早20年以上が経っていた。
衝撃を受けたのは、統計が示すごみの総量がこの数十年間、全く変わっていなかったからだ。「仲間と続けてきたことは無意味だったのか」。思わず力が抜けた。
ビーチクリーンだけでは根本解決にならない。それが結論だった。海岸ごみは7割が川から流れ、川ごみは街から流れ出る。ボランティアの力だけでは限界があった。
その後、海岸ごみの研究に没頭。専門家や研究者など100人以上に会い、関連する書籍や雑誌も読み漁った。
そんな時に行き着いたのが、ブルーフラッグという海外の制度を紹介する論文だった。国際NGOが水質や美観、安全性など33項目で審査し、基準を満たしたビーチは専用旗を掲げることができる。認証はすなわち、海岸環境も世界基準であることの証明だ。
「これだ」。海をきれいにするにはこれしかない。そう直感した。
国内では前例がなかったブルーフラッグ取得を目指し、2011年5月に前身となる任意団体を設立。組合関係者や市議などに掛け合った。だが全く相手にされない。
「地元の人間は湘南の海がきれいでないことを知っている。できるわけがない」。また別の関係者からはこうも言われた。「それは一体いくら儲かるんだ」
理解を得る前段として、10年先の街づくりを都市構想としてまとめることにした。1年かけて会議を重ね、13年2月に「湘南都市構想2022」を発表。藤沢市を含む相模湾沿岸の8市町の首長に面会を申し入れ、ブルーフラッグ取得の提言を行ったが、答えは全てノーだった。
万策尽きたかに思えた。だがそんな中で唯一、賛同してくれたのが由比ガ浜茶亭組合(鎌倉市)の増田元秀組合長だ。「ブルーフラッグには大きな可能性がある。一緒にやろう」。国内初の挑戦が始まった。