宇宙輸送システムと地元企業の意外な関係――。6月4日、米NASAケネディ宇宙センターから、特別な保冷容器を積んだロケットが打ち上げられた。容器開発には湘南台にある(株)テクノソルバ(中村和行代表=人物風土記で紹介=)が協力。「構造解析」で、宇宙工学の最先端分野に挑み続けている。
湘南台駅前の商店街にあるビルの一室。一見しただけでは宇宙工学の最先端を支える企業とは分からない。
構造解析とは、製品開発で用いられる、コンピューターによるシミュレーション技術の一つ。設計図などを元に製品をパソコン上で再現し、圧力や温度など、条件を変えながら負荷を計算。製品の性能や想定される様々な可能性などを解析する。
特に、実際と同じ条件の実験が難しい製品や、試作にも大きな費用が掛かる製品、完成までにタイムリミットのある状況などで活躍。そのすべてを満たす宇宙開発には欠かせない技術だという。
一方で専門部署を設ける企業は少なく、同社のような専門企業に外注するケースが多い。現在国内では、宇宙工学分野の構造解析を専門に扱える企業はほぼ同社のみ。
2004年に設立以降、人工衛星といった宇宙開発機器など、年間100件ほどの案件依頼を受ける。
失敗は許されないだから楽しい
今回のミッションは、国際宇宙ステーションから宇宙で生成されたタンパク質の結晶を地球に持ち帰るための容器。打ち上げなどの衝撃を中の試料に与えないことが条件で、中の温度は、20℃を12日間以上保ち続ける必要がある。
2018年に同じくJAXAからの依頼で、タイガー魔法瓶(株)と協力し開発した容器の改良版で、さらなる小型化、複数回の再利用を可能にした。中の試料に関する研究はもちろん、宇宙の輸送システム構築の可能性として注目される研究で、19年に同社は日本産業技術大賞を受賞した。
現在、1カ月半後に予定された「帰郷」を待つ。「宇宙分野での失敗はまさに『宇宙の藻屑』、大赤字。失敗を可能な限りなくすのが構造解析。だから楽しい」と中村さんは微笑んだ。
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