25日から江の島沖で開幕した東京五輪セーリング競技。様々な階級で競技が繰り広げられる中、「レーザー級」と呼ばれる一人乗りのヨット競技を支えている企業が市内にある。鵠沼橘に本社を構える「パフォーマンスセイルクラフトジャパン(株)」だ。
同社は1974年に創立。綾瀬市上土棚南に自社工場を持ち、年間50〜60艇を製造。今回の東京五輪にも男子と女子用に計99艇を提供した。同社代表取締役の大谷隆夫さん(75)によると、認定を受けたレーザー級のビルダー(製造会社)は世界に8社しかなく、国内では同社が唯一だ。
他のセーリング競技と異なる最大の特徴が、どの会社が作った船でも性能を揃えるという点。レーザー(レーザーラジアル)級は「供給クラス」と呼ばれ、選手自らが船を持ち込まない。船の性能によらず、純粋に技術力で競ってもらうため、製造段階でも細心の注意を払う。船体の磨き具合やバランス、帆に使う布やマストのパイプも同じ生産ラインのものを使う徹底ぶりだ。
元々、セーリング競技は船の製造費や世界の転戦費用など「他のスポーツとは比較にならないほどお金がかかる」(大谷さん)のが常識だった。膨大な費用負担に耐えられる選手がどうしても有利になる。そうした状況を踏まえ、なるべく低予算で出来るようにし、競技の裾野を広げようと1970年代初頭に生まれたのが始まりという。
大谷さんも、元競技者で日本代表として世界戦に出場したこともある。世界の大会を見て回っていたある時、英国でレーザー級に出会い感銘を受け、船を自作していた経験を生かして同社の代表を務めるまでになった。
昨年はコロナ禍で大会が延期になり、従業員の雇止めを防ぐため、製造した船を全て海外に格安で売り払うなど苦難もあった。だが、若い頃豪でセーリングが身近な生活に文化として定着していたことにカルチャーショックを受け、「日本でも普及させたい」と願ったのが原点。週末を返上し、今大会の納品も間に合わせた。
大会期間中も船の調整や整備のため江の島に足を運び、大会運営を陰から支える。レーザーラジアル級には藤沢ゆかりの土居愛実選手もいる。心境を問われると「僕にとっては船と同様、選手への気持ちも同じ。皆が幸せならハッピー、それだけ」。そう言って屈託のない笑みを浮かべた。
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