先月設立したNPO法人「赤ちゃんとママを守る会」の代表を務める 渡辺 優子さん 鵠沼神明在住 43歳
産後ケア、もっと身近に
○…昨年9月、民間としては藤沢で初の産後ケア施設をオープンした。出産直後、10人に1人が発症するとされる「産後うつ」。コロナ禍でその数は増加傾向にある一方で、産後ケアサービスが十分に活用されていない現状がある。「疎外感や孤独感に苦しむママに手を差し伸べたい」。そんな思いが背中を押した。生後6カ月までの乳児を預かるNPO法人の設立はその第2弾だ。
○…長女が産声をあげない重症仮死状態で生まれたこともあり、出産後「ちゃんと育てなければ」と自らを追い詰め続けた。看護師としてフルタイムで働き、睡眠時間を削る日々。パートナーは仕事に追われ、転居したてで誰にも相談できる環境にない。食事ものどを通らずに孤独感だけが深まっていき、ふと思った。「自分は何のために生きているのか」。気が付けば、我が子を可愛いと思える心のゆとりすらなくしていた。
○…産後うつを抱える人は、心の逃げ場がなくなり自らを死に追い込んでしまうケースもある。乳児を預かる活動を通じて伝えたいのは、母親が自分を大切にする時間を確保することと、育児を心から楽しめるよう支援していくことだ。法人設立にあたっては保育士や助産師らに子育て相談ができるオンラインサービスや乳児と一緒に参加できるイベント事業も柱に掲げた。「人を頼っていいし、がんばらなくていい」。そう呼び掛ける。
○…夫と子ども2人の4人暮らし。現在は月に1度、宿泊旅行をするのが楽しみだ。事業はまだ始まったばかりだが、年間3千人以上が出生する藤沢市の統計に照らせば、今も精神を病む相当数の人がいる。産後ケアを必要としている人のため、「自分が起爆剤になればいい」。その言葉に覚悟がにじんだ。
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