藤沢の想いを神奈川へ㉓ 聞こえない・聞こえづらい子どもたちの夢の実現のために 県議会手話言語普及推進議員連盟事務局長/神奈川県議会議員 市川かずひろ
神奈川県議会は、平成26年12月、鳥取県に次いで全国で2例目、議員提案では全国初の手話言語条例を制定しました。これは、日常的に「手話」をコミュニケーション手段として使用されている当事者の団体、神奈川県聴覚障害者連盟より、約5万5千筆超の署名とともに条例制定を求める陳情が提出されたことを受け、県議会内に設置した検討チームで議論を重ね、制定に至りました。
そんな中、私のところに「条例が制定され、『手話は言語である』としながらも、健常乳幼児は、言語を自然に習得することが出来るが、聴覚障がい児は、例えば、保護者が手話を使えない場合、自然に言語を習得することが難しく、言語能力の発達にも支障を生ずる可能性があり、こうした課題について、県で実効性のある取り組みをしてほしい」との切実な声が寄せられました。
私はまず、令和元年9月の本会議で、「手話の普及推進について」質問し、知事より、「県としては今後、聴覚障がいの子どもが保護者とともに遊びを通して自然に手話を身につけられ、家庭でも手話による会話が育まれる、そうした取り組みを検討していきたいと考えている」との答弁を引きだしました。
その後、ともに生きる社会かながわ特別推進委員会で、大阪府乳幼児期手話獲得支援事業(こめっこ等)を調査。神戸大学の河崎佳子教授のお話を聞き、聴覚障がい者が乳幼児期から、その保護者等とともに手話を習得できる機会の確保が何よりも重要であることを認識し、本会議や委員会のあらゆる機会を通じ、県当局にそうした事業の必要性を訴えました。
結果、令和2年度から神奈川県聴覚障がい児等手話言語獲得支援事業「しゅわまる」が開始されました。現在、事業が開始して4年が経ちましたが、私もできる限り、しゅわまるの現場や、報告会に参加させていただいています。保護者の方より、「ろう者との出会いにより、将来への不安がぬぐえた。子どもと自信を持って接することが出来るようになった。手話が大切であることが分かった。この事業があって本当に良かった」とのご意見を頂き、本当に嬉しかったです。
今では「手話遠足」や「出張しゅわまる」「ベビーしゅわまる」など工夫を凝らした取り組みが次々と実施されています。引き続きしゅわまるのさらなる充実に向けて全力で取り組みます。
毎年9月23日は、平成29年12月19日に国連総会で決議された手話言語国際デーです。この決議文では、「手話言語が音声言語と対等であることを認め、ろう者の人権が完全に保障されるよう、国連加盟国が社会全体で手話言語についての意識を高める手段を講ずることを促進すること」とされております。
私は、こうした機会に本県においても手話言語についての意識、理解促進を図るために、例えば、手話言語国際デーのロゴのカラーであるブルーを県庁本庁舎においてライトアップするなど、改めて県の姿勢をより明確にすることも重要であると考え、令和4年6月の本会議において、黒岩知事にその考え方を質しました。知事より「国連が定めた9月23日の手話言語の国際デーを活用して周知・啓発を強化していく。具体的には、今年度初めて県庁本庁舎を国際的な手話普及のシンボルカラーである青色でライトアップし、この国際デーと合わせて、県内の手話普及推進イベントなどを県民の皆様に広くPRしていく」との答弁を頂きました。
私は、県にライトアップを提案した以上、地元藤沢でも手話普及推進イベントを開催すべきと考え、県聴覚障害者連盟の河原理事長と相談し、実行委員会を立ち上げ、多くの関係者の協力を頂き、江の島シーキャンドル(第1回)や新江ノ島水族館(第2回)において、内容の充実した手話言語の国際デーinふじさわを開催しました。
ここで、忘れてはいけないのは、このイベントには手話通訳者やろう者支援に携わる多くの方にもご協力をいただいているということです。手話言語の普及推進に努めると同時に、手話通訳者などのろう者支援に携わる方々の地位の向上にも努めなければなりません。私は、令和5年9月の本会議において「資格者としての手話通訳士、手話通訳者になるには、数年間の研修の上、認定機関の試験を受験することとなっている。士業として、専門職としてのステップがありながら、一方で、正規職員としての雇用の場はほとんどないのが現状である。県内自治体でも、会計年度任用職員としての任用が中心であり、雇用は安定しているものとは言えず、賃金水準も一般職員と比べて低いものとなっている。こうした職業体系の問題から、手話通訳で生計を立てることは難しく、副業として担われている方が大半となっている。手話が言語であるならば、その言語の伝道師たる手話通訳者が生業として成り立つものでなければ、夢を持って目指す職業となりえず、奉仕員、ボランティアの域を脱することはできない。制度、環境が手話の普及を阻害していると言っても過言ではないと考える。こうした実情を踏まえてしっかりと取り組んでほしい」と知事に要望いたしました。
今年も手話言語の国際デーinふじさわ開催に向けて準備をしています。こうした実情を多くの県民市民の皆様に知って頂きたいと思っています。
今月18日の厚生常任委員会において、神奈川県聴覚障害者連盟より「手話言語による国歌」策定を定める意見書提出についての陳情が提出され、全会一致で了承されました。委員会では、デフリンピックバレーボール金メダリストの中田美緒選手が、「手話でも国歌を斉唱できるように、国で統一した表現を決めてほしい」との意見陳述を行いました。
これまでわが国で考えられてきた「国歌の手話表現」の多くは、日本語の歌詞に沿って検討されている例が多く、聞こえない人が国歌に親しみ、国歌を斉唱出来るようにするためには、日本語の歌詞の手話表現を検討し、統一された「手話言語による国歌」の策定が必要と考えます。国においては東京2025デフリンピック大会で金メダルを獲得する選手のためにも、県議会からの意見書を受けとめ、専門家や当事者団体等との意見調整のもと、早急に策定して頂きたいと思います。
また、私は、デフアスリート支援や機運醸成の取り組み、デフリンピックを契機とした障がい者スポーツの推進などについては、引き続き力を入れてまいります。更に申し上げれば、デフリンピックのその先を見据え、デジタル技術を活用した新たなコミュニケーションツール等の情報収集を行い、情報保障、情報バリアフリーを飛躍させるために全力で取り組んでまいります。
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このように、神奈川県聴覚障害者連盟や藤沢市聴覚障害者協会はじめ、多くの団体の皆様、県民の皆様と一緒に取り組んできたことをご報告させていただきました。
私は、表題にもあるように、聞こえない・聞こえづらい子どもたちの夢の実現のために、真の共生社会・ともに生きる社会かながわの実現のために地元藤沢の県議の一人として、これからも努力してまいります。
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