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藤沢 人物風土記

公開日:2025.02.21

NPO法人こども達に未来をin湘南の代表を務める
松延 康隆さん
片瀬在住 75歳

「福島は終わっていない」

 ○…あざのように心に刻まれた光景がよみがえる。福島第一原発事故で帰省困難区域に指定された浪江町津島。放射線が容赦なく襲いかかり、住民約1400人はほぼ帰れていない。「イノシシが家々を荒らしていた。子どもは見当たらない。家族は分断され、歴史や伝統、文化すべてが消えた」。かつては栄えたと思しきまちも、当時の面影をしのばせるものはなかった。「原発事故の脅威、過酷さを風化させるわけにはいかない」と強い意志を瞳に宿らせる。

 ○…未曾有の被害をもたらした東日本大震災。妻や義弟と避難所で炊き出しをしたことを機に、NPO発足に携わった。春と秋に現地の小中学生を湘南に招き、保養イベントを開催。海水浴や地引き網体験などで楽しんでもらおうとしたが、津波で命を落とした家族のいる子も多く、「こわい」という反応に受けた傷の深さを噛みしめた。コロナ禍以降は、講演会や写真展を通じて「現地の声」を届け続けている。

 ○…体の弱かった4歳の息子を気遣い、父は都内から自然豊かな片瀬へ移住を決めた。高校卒業時は学生運動のただ中。「勉強なんてできない」とアルバイトを転々とし、26歳でようやく大学へ。その後は予備校で日本史の講師に、母校の鎌倉高校でも非常勤で教鞭を執った。定年前に政治家の秘書も経験した。

 ○…3年前から運営する大鋸の障害者グループホームに、大学1年生を夜勤スタッフとして迎えた。南相馬市で被災し、小学1年から保養に参加していた男児だ。「湘南を好きでいてくれた」。原発事故から15年、自身も訪れた津島を題材にした映画を上映することにした。「仲間は皆高齢になった。息の長い活動をするためにも、若者にも素直な目で観てほしい。福島は終わっていない」

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