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鎌倉 人物風土記

公開日:2011.08.05

「県立近代美術館」の館長を務める
水沢 勉さん
葉山町在住 58歳

橋渡し役として



 ○…芸術や文化を発信し続けて60年の歴史を誇る、神奈川県立近代美術館。20世紀の文化や芸術を問いかける企画展を常に発表し続けている。33年に渡る学芸員としての実績を買われ、今年の4月館長に就任。「これまでの歴史を踏まえながら、きちんと未来に繋がるものを発信していきたい」と語る。



 ○…「ステージを用意する人」。それが自らの考える学芸員。展覧会は館長や学芸員が発案し、展示に必要な作品の収集や作家への打診、予算取りなどおよそ1年かけて企画を組み立てていく。「音楽家に舞台が必要なように、作家と作品を観る人とを繋ぎ合わせる場所を作るのが私たち学芸員」。作家のパートナーとして、また時には作品をより魅力的に展示するための空間コーディネーターとしての役割も果たす。「でも一番大事なのは人間関係。作品の理解度や作家との関係性、その他の交渉ごとも全て人間関係あってこそですから」と言葉の端に長年の経験が滲む。



 ○…子どもの頃から美術が大好きだった。幼少の頃は両親に連れられ美術館に通い、高校生になると自分も油絵を嗜むようになった。「でも自分よりはるかにうまい奴がたくさんいまして。自分の美術の才能は早々に見限ってしまった」。それでも美術という土壌から離れたくなかった。大学では美術史を専攻。「創作の場に一番近くにいたい」という想い一心で学芸員を生業に選んだ。「作品との距離感が近いということが一番の喜びです」と笑顔を覗かせる。



 ○…県立近代美術館では先月12日から「開館60周年 近代の洋画ザ・ベストコレクション」の後期が開催中。戦時下にヒューマニズムを追求した画家の松本峻介の「立てる像」など約100点を展示している。同館が開館から最も力を入れて研究してきた日本の近代洋画の結集となっている。「今回の企画展で来館された方にうちの歴史の厚みを知って頂ければ」と語った。

 

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