鎌倉 人物風土記
公開日：2025.12.26
映画「国宝」のサントラに参加した、鎌倉ゆかりの尺八奏者
工藤 煉山（れんざん）さん
神奈川県内在住 49歳
尺八の無限の可能性探求
○…北鎌倉の禅居院で尺八道場「虚道」を開き、尺八本来の姿である「吹禅（すいぜん）」をライフワークとする。かつて北鎌倉で暮らし、この地の空気感と禅寺は活動の精神的支柱だ。伝統文化と現代アートを融合させる活動は、世界遺産・醍醐寺での音舞台出演をはじめ、ジャンルを超えて展開。直近では、音楽家・原摩利彦さんの誘いを受け映画「国宝」のサントラに参加し、「音への深いこだわりを感じた。映画に魂を吹き込んだ現場に参加できて光栄」と喜びを語る。
○…北海道札幌市出身。11歳の頃に尺八と出合い、音が鳴った瞬間の「すごい快感」が原点だ。憧れの作曲家・坂本龍一さんを追って東京藝術大学に進学し、大学院修了後に渡英。ＢＢＣラジオに出演するなど多忙な日々を送る中で、過労により左耳が聞こえなくなり、７年間音楽から離れる苦難を味わった。しかし、東日本大震災のチャリティーを機に再起を決意。「もう一度尺八に人生をかけたい」と徹底的に突き詰めた。
○…求道は、坂本さんとの共演というかたちで結実。「勇気をもってＳＮＳでメッセージを送った」ことから交流が始まり、のちに音楽性に共感した坂本さんとのコラボレーションが実現し、自然との共存や禅の音を表現する音楽が生まれた。
○…尺八の探求は「まだまだ入口」と謙虚。可能性の広がりを感じており、道場での指導中も、「生徒の成長が（尺八の可能性を）教えてくれる」と、指導者としての発見も楽しむ。来年以降は演奏・制作活動をさらに推し進め、次の夢であるグラミー賞や海外レーベル所属を目指し、本格的な海外展開を視野に入れる。「日常の中で聴いてもらえる音楽をつくりたい」。世界を見据え、深く響き渡る。
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