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鎌倉 人物風土記

公開日:2012.05.18

4月から横浜市立金沢動物園の園長に就任した
原 久美子さん
稲村ガ崎在住 53歳

葛藤超え動物と寄り添う



 ○…飼育担当係長から、開園以来はじめての女性園長に。「降って湧いたような話。私がなるなんて、予想もしていませんでした」とはにかむ。これからの希望を問うと、「就任したばかりで、まだ頭の中が渾沌としていて…」。しばらくの沈黙のあと、こう語った。「『すてきな動物園』にしたいんです」。かかわる誰もが、やさしさ、楽しさ、おもしろさを感じられる心地よい場所にすること。それが、四半世紀にわたって動物園にかかわってきた彼女のひとつの「答え」だ。



 ○…育ったのは、湘南の風が薫る鎌倉。好奇心旺盛な少女が興味を持ったのは、生きものだった。「巣穴を出入りするアリをじっと見ていたのを、今でも思い出します」。カマキリの視線が怖かったこと、庭に出たカタツムリをバケツに全部集めたこと…。生きものの元気な姿を見ている時間が、一番のお気に入りだった。心の奥底にあるその気持ちに正直に、突き進んできた。「やりたいことをやってきたら、こうなりました」と微笑む。



 ○…大学で動物の行動観察を専攻したのも、自然な流れだった。毎日動物園に通い、霊長類の生態を研究する日々。そこで、ある不思議な体験をした。チンパンジーに寄り添っていたある日、ふとした瞬間に目が合った。お互いにうなずきあった「2人」は、アイコンタクトで心を通わせた。「やっぱり、つながってるんだ!」。肌身で感じた動物とのつながりが、この仕事の原点になった。



 ○…園長になった今、葛藤もある。「飼育下に置くのは、生きものの本来の姿じゃないんです」。目を潤ませながら訴える。動物を展示するだけではなく、研究や種の保存など、様々な役割を負う動物園。人間が他の生物と共存していくための「必要悪」なのかもしれない。それでも続けてこれたのは、「生きることの素晴らしさを感じられるから」。そのことを噛みしめるように、動物たちに温かなまなざしを向け続ける。

 

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