25周年を迎える高齢者合唱団「ムジカおさらぎ」の歌唱指導を務める 佐藤 ゆりさん 西御門在住 63歳
歌で人と社会を繋ぐ
○…名優ダスティン・ホフマンの初監督作品「カルテット!人生のオペラハウス」(公開中)。今月行われたジャパンプレミアで高齢者合唱団100人が劇中で使用される「乾杯の歌」を披露し、喝さいを浴びた。その合唱団「ムジカおさらぎ」の結成から指導者を務める。「平均年齢77・4歳とは思わせない歌声で、会場を驚かせることができました」とほほえむ。
○…東京都出身。小学生からピアノを習い、中学生で歌のレッスンにも通い始めるなど10代の青春は音楽に寄り添って過ごした。一家で鎌倉に越してきたのは15歳のとき。「やっぱり音楽がすごく好きだから」と、22歳でフェリス女学院短期大学声楽科に進学。2年生の時に結婚し、27歳で長男を出産。4人の子育てをしながら演奏会や合唱団指導に精を出すなど、目まぐるしい日々を過ごしたという。
○…25年前、鎌倉生涯学習センターから60歳以上が対象の高年者合唱教室の指導者として声がかかった。当時、市民合唱団員の多くは専業主婦。「高齢になると声が出なくなる」として60歳を境に退団する団員も多かった。しかし、自身の経験を振り返り「子育てに追われる世代よりも手が離れる60歳からこそ、歌う場が必要なのでは」との思いがあった。これを裏づけるように、同教室は見込みの3倍以上の90人で始まり、半年後には300人近くに激増。以後、市民合唱団「ムジカおさらぎ」として地位を築いていった。6年目からは演奏会で募金を実施。「ここは歌を通して社会参加できる団体。高齢でも人に世話されるより『ありがとう』と言われたいものよ」と話す。
○…ムジカおさらぎを含め、8つの合唱団の指導にあたる。「休む間はないわね。合唱を拠り所にする方のためにも責任を持って人前に立たなくちゃ。『歌が生きがい』と生徒に寄りかかり出したら、そこが辞め時だわ」。指導者として自らも、これからが円熟の時だ。