3月11日に解禁されたしらす漁。鎌倉を含む県内しらす漁業者で作る「神奈川県しらす船曳網漁業連絡協議会」がこのほど、漁業者の全国大会で2位となる水産庁長官賞を獲得した。評価されたのは、全国でも先駆け的存在として注目される「6次産業化」の取り組み。同大会では市内坂ノ下の漁師・安齊大輔さんがプレゼンテーションを行った。
「第19回全国青年・女性漁業者交流大会」は3月4日、5日の2日間、東京都千代田区で開催された。全国漁業協同組合連合会が主催する同大会は「漁業者の甲子園」とも言われ、今回は38団体が参加した。
安齊さんが登場したのは、付加価値向上を通じて流通・消費の拡大を図る第3分科会。「しらすMY LOVE・湘南しらすは世界一!」と題し、「神奈川県しらす船曳網漁業連絡協議会」が取り組む6次産業化について発表した。
漁獲から販売を一手に
県内のしらす漁業者が、漁獲だけでなく加工や販売に取り組むようになったのは30年ほど前という。それまでは各浜に加工業者がおり、漁業者は水揚げした魚を業者に渡すことが一般的だった。
しかしこれら加工業者の廃業が相次いだことから、一部の漁業者が自ら加工、直売を始めた。当初は品質の安定化など苦労も多かったものの、評判が広まり顧客も増えたことから、現在ではほとんどのしらす漁業者が、漁獲、加工、販売を一手に行っている。
同協議会は1989年に発足し現在は46人が所属する。研修会の開催のほか、ブログの開設による直売所やイベント等の情報発信、レシピ本の制作などを通じて、漁業者をバックアップしている。近年は新製品の開発にも力を入れており、鎌倉の料理研究家・矢野ふき子さんと開発した「しらすの沖漬け」などの商品が産まれている。
今回こうした取り組みが6次産業化の先駆的事例として高い評価を受け、農林水産大臣賞に次ぐ水産庁長官賞を受賞した。安齊さんは「神奈川県初の1位を狙っていたので悔しい思いもあるが、評価されたことは励みになる」と話す。
「漁業の新しいモデルに」
今回の発表者に抜擢された安齊さんが、しらす漁を始めたのは5年前。祖父や父も漁師で、高校卒業後、定置網漁に就いていたが、生産から販売まで手がけられることに魅力を感じ参入を決めた。
船や漁具だけでなく、加工場や直売所の整備が必要で初期投資がかさんだうえ、1〜2年は漁獲も安定せず、苦労が続いたという。
普段は夜明けとともに漁に出て、浜に戻るとすぐに加工。直売所での販売や契約する飲食店への配達など忙しい日々が続く。
販路の拡大やブランド化など課題も多いが「頑張った分が全部自分に返ってくるのが、漁業の一番の魅力」と笑顔を見せる安齊さん。最近は若い漁業者から相談を受けることも多く「後に続く人のためにも漁業の新しいモデルを作っていきたい」と話している。
鎌倉版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|