今年度の「神奈川県保育賞」を受賞した 丸山 裕子さん 大町在住 59歳
「豊かな表情引き出したい」
○…重度の肢体不自由、知的障害を抱える重症心身障害児(者)のための施設「小さき花の園」(腰越)で、保育の専門家として10年にわたって、療育(社会的自立を目指した治療・教育)に携わってきた。音楽や工作、料理を通じて利用者の感性に働きかける活動が評価され、神奈川県保育賞を受賞した。「子どもたちのために、と続けてきただけですが、素直にうれしい」と朗らかに語る。
○…東京都出身。「子どもと関わる仕事がしたい」と短大で保育士の資格を取った。在学中のボランティアをきっかけに、卒業後は都内の障害児施設へ。保育園に転職して経験を積んだ後、結婚を機に夫の転勤先であるカリフォルニアへと渡った。「じっとしていることが苦手なので」と現地では日本人向けの幼稚園で働いた。「工作道具を大勢でシェアすることで周囲との関係性が身に付くアメリカ方式と、自分のお道具箱を持つことで片付け方を覚える日本式。両方の良さを知り、子どもの発育に必要なことについて見直すことができました」と振り返る。
○…帰国後に鎌倉へ。御成小学校の特別支援学級の支援員などを経て、現在の職場で働き始めた。4年前、施設に新病棟ができ、改めて保育士としての役割を模索した結果、たどり着いたのが現在の療育活動だ。「七夕や端午の節句など、季節ごとのお菓子を作ることも多いのですが、人によっては出来上がったものを自ら口にできない場合がある。それでもお菓子の匂いを嗅いだり、触っているだけで最初はなかった反応が表れ、感情が見えるようになる。その子らしい表情を引き出せた瞬間にやりがいを感じます」と言う。
○…忙しい日々の癒しは娘や友人との旅行。「次は東北に行きたい」と笑顔を見せる。また最近ではウクレレを始めた。「寄り添いながら演奏できるから利用者さんに喜んでもらえる。なにより私自身が楽しんでいます」と微笑んだ。