鎌倉市が市役所本庁舎を深沢地域整備事業用地に移転し整備する方針を打ち出していることに反発し、「市民に是非を問うべきだ」とする市民団体が9月1日から、署名活動を開始した。同団体は10月1日までの期間に3千人以上の署名を集めて条例案とともに市長に提出、今年末から来年初めにかけての住民投票実施を目指している。
1969年に竣工した現在の市役所本庁舎は、老朽化により業務の非効率化が顕著になっているほか、過去最大級の地震が発生した際には、津波の浸水も想定されている。
そのため市は再整備に関する検討を進め、昨年3月に「移転して整備」する方針を決定。今年3月末に発表した公的不動産利活用推進方針に、本庁舎の深沢移転を盛り込み、5月1日号の広報かまくらでは「災害時でも機能する本庁舎を」と1面に大きく掲載した。
しかし移転が決定したように表記したことなどに反発する市民らが5月、地方自治法第74条に定める直接請求(有権者の50分の1の署名で代表者が地方公共団体の長に条例の制定や改廃を請求できる)により、移転の是非を問う住民投票の実施を目指すことを表明。「市役所移転を問う住民投票の会」が結成された。
同会では選挙管理委員会との手続きなどを進め、9月1日から署名活動がスタートした。期間は10月1日まで。
今後は市内各地域での署名活動のほか、週末は駅頭でも行う予定という。必要な署名数は約3千人分だが同会は「1万人を目指したい」とする。
集まった署名は選管が審査し、有効なものが基準を超えれば条例案とともに市長に提出。臨時市議会で審議が行われる予定だ。同会では「早ければ今年12月から来年1月にも住民投票が実施できるのでは」とする。
「説明に誤り」市が訂正
この問題をめぐっては、8月29日に同会が商工会議所ホールで開催した対話集会に出席した松尾崇市長の発言を、市が後に訂正する事態となった。
問題となったのは、広報かまくら8月1日号の「大雨による災害から身を守るために」と題した特集。参加者の一人が「今年1月に県が公表した洪水浸水想定区域図では、これまで深沢地域の一部とされていた浸水範囲が、移転予定地のほぼ全域に広がったほか、50cmから3m未満の浸水も想定されている。なぜ最新の情報ではなく市が(2010年に)作成したハザードマップが掲載されているのか」と質問した。
これに対し松尾市長が「想定図の市広報への掲載に関する了解が、県から得られなかった」と回答。しかしその後、市が改めて確認したところ、県に掲載についての問い合わせ等を行っていなかったことが判明。市は「制作過程で担当課が、県としては広報で使うために想定区域図を出すことはできないと誤った解釈をし、それを市長にも伝えてしまった」として、8月31日に市議会議員や同会に経緯を説明した。
同会の岩田薫さんは「移転に都合の悪いデータを意図的に隠したとしか考えられず、災害に強い本庁舎を作るという前提が崩れた」と話した。
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