12月に川喜多映画記念館で作品を上映する映画監督 大嶋 英幹(ひでき)さん 鎌倉山在住 39歳
映画で問う日本人の生き方
○…カナダ映画祭5部門をはじめ、複数の賞を受賞した第1作『BAKEMONO』と、10月にスペインの映画祭で5つ目の賞を受賞した第2作『ヒノイリの風』。海外で高い評価を受けた2作品が12月に川喜多映画記念館で初めて上映される。作品には「日本人とは、生きるとは」という問いを込めた。第1作では主演が一言も話さずに物語が終わる。決して「商業的」とは言えないが、「何を感じるかは受け手次第。こういう作品も必要だと思うんです」
○…都内の広告制作会社で映像制作に携わり、10年前に独立。映像・デザイン会社を設立し、企業CM等を手掛けてきた。東日本大震災後、「大勢の人が亡くなり、原発の不安や国への不信感が募る中、何をして生きていく必要があるのか考えた。自分が思いを表現するなら芸術だと思い立った」という。
○…企画書を手に仲間集めから始めた映画制作。同じ映像作品でもCMと映画では表現方法が異なるため苦悶したこともあったが、「主演のOBAさんをはじめ、さまざまな分野の表現者が力になってくれた。当時は交通費くらいしか出せない状態。有志の思いで完成したようなもの」。2作目では「やり直しがきかない分、表現力が高まる」とフィルム撮影に挑戦した。次回作は祭りや舞をテーマとした初の長編で、すでに動き出しているという。
○…愛知県出身。鎌倉は鈴木清順監督の『陽炎座』など、好きな作品に多々登場する憧れの地だった。能などの伝統芸能も制作の刺激となっている。自然豊かな場所で子育てをと選んだのは鎌倉山。両親、妻、3人の子どもたちとの暮らしはいつも賑やかだ。帰宅時のマイルールは仕事モードをオフにすること。「家族第一です。家族あっての仕事ですから」と笑う。