西洋哲学の入門書『14歳からの哲学サロン』(銀の鈴社)を出版した 板生 郁衣さん 浄明寺在住 74歳
哲学者からヒント得て
○…「哲学の面白さを知ってほしい」と西洋哲学の入門書を上梓した。鎌倉・東京で開催した「哲学サロン」の講話をまとめたもので、本には参加者の疑問や意見、デカルトの「心身二元論」に救われた自身のエピソードなども掲載。「本をきっかけに、偉大な哲学者の考えから視野を広げたり、悩みを解く手掛かりを見出してもらえたら」
○…茨城県出身。元々通訳を夢見ていたが、大学の教授が紹介した哲学の話に心惹かれた。「その頃は弟を事故で失った喪失感が続いていた。人生や内面的な部分への関心が高かった」。カント哲学を学び「心は満足」したが、生かせる仕事は少なく、卒業して間もなく研究者の夫と結婚。2人の子どもが幼いうちは主婦として、40歳からは塾や高校の英語教師として定年まで働いた。
○…サロンを開くきっかけは「本当の友達っている?」という孫娘の一言。「友人関係で悩んでいたんでしょうね。調べれば何でも出てくる時代になっても60年前の私と変わらないなと」。その「答え」の鍵にと浮かんだのが大学時代に学んだ哲学。考えるうちにより多くの人に哲学を知ってもらいたいと思うように。ほどなく、それを知った人からサロン開催を提案され、すぐに準備を始めた。サロンには14歳から80歳までの老若男女が参加。講話には、文化や歴史も取り入れて紹介。「興味深かったという声もあれば、なぜこの話題をという批判もあった。双方向の場は私も学ぶことがあり楽しかった」
○…日本カント協会にも所属。哲学を仕事とする会員がほとんどで、一般の若い人向けの入門書を書く人は多くないという。「この1冊でやりたいことをやりきった。ある教授からも『感嘆した』と褒めていただいて自信も持てた」