「ワールド チョコレート マスターズ」(10/29〜・フランス)日本代表の 田中 二朗さん 山ノ内在勤 43歳
常に「最高」を求めて
○…北鎌倉にある洋菓子店「ショコラトリー カルヴァ」のオーナーシェフ。6年前の国際大会で優勝し、「もう大会には出場しない」と心に決めた。しかし、がんを患った友人が、人生最後に自身の焼き菓子を口にしたことを知る。「やっぱりおいしいね」と微笑み、数時間後に息を引き取った。「もっとおいしく」。そう心に刻み、有名シェフが集う「ワールドチョコレートマスターズ」に参戦し、日本2位になった。
○…その大会での作品に納得し、達成感も感じていた。しかし3年前、釣りで訪れる南房総で台風被害があり、焼き菓子を贈った。喜ばれた一方で、アレルギーで食べられない女の子がいたことも知る。「良かれと思ったことで、傷つけてしまった。みんながおいしいと思えるように」と闘志に再点火。昨夏の国内大会で優勝し、今月29日からフランスで開かれる世界大会に臨む。
○…野球少年で、横浜高校野球部の門を叩いた。3年春に肘を負傷。力を持て余し、夜中まで遊んで家に帰ると、ケーキ屋を営む父親が仕事をしていた。「夜中から作り始めないと間に合わないから」という母親の言葉が衝撃的だった。「夜中から働いてくれて、野球も続けられた」。父親の姿に影響を受け、パティシエを志す。卒業後、東京プリンスホテルに入社し、修練を重ねた。俳優の上地雄輔さんは横高野球部の同級生で、松坂大輔元投手は1年後輩。「みんなの頑張りに支えられている」と刺激を受ける。
○…「人々にとって心から必要とされるお菓子づくりを」と語る。今大会のテーマは「TOMORROW」で、明日に必要なものは何かを表現する。すべての人の明日が変わる作品づくりに挑み、頂点を目指す。