地域の社交場として親しまれているコインランドリーが、市内南湖にある。その店のドアを開ければ、棚いっぱいに本が並び、机には来客者それぞれの思いが詰まった連絡ノートが積まれている。利用者は洗濯が終わるまでの間、これらの品々を手に取り、顔なじみが入ってくれば雑談に興じる。「コインランドリー白樺」(南湖5の16の5)の日常風景だ。
本屋時代からの常連も
手作り感にあふれる同店を運営する渡辺キミ子さん(71)は、「本当に皆さんに支えられています。本もほとんどが利用者の皆さんに頂いたものなんです」と話す。渡辺さんは、もともとこの地で半世紀近く続いた白樺書店の店主。15年前にコインランドリーとして装いを変えたが、「地域の笑顔が集まる場所に」という思いは本屋時代と変わらず、近辺で採れた野菜や花、本などを置き、居心地の良い空間作りを心掛けた。
取材中にも、常連客が1人、2人と入ってくる。「ここに来れば、知り合いとも会える。お話できるのが楽しいのよ」とほとんど毎日訪れるという婦人は顔を綻ばせる。「ここは清潔。みんなのランドリーだから、汚すような人がいれば注意します」とは、本屋時代から付き合いのある女性。洗濯という家事が、ここでは地域の絆をつなぐ時間になっているようだ。
書き込み続くふれあい帳
絆は文字上でも育まれている。利用者が自由に書き込める連絡ノート「ふれあい帳」には、常連の近況や置かれている本の感想、時には旅行者による茅ヶ崎の印象などが脈々と綴られている。これに、渡辺さんは赤字で返事をしたためる。「ふれあい帳をきっかけに、数年ぶりに連絡できた方もいます。色々な方とつながれる、私の宝物です」。”宝物”は、15冊目を数えるまでになった。
現在、同店近隣の浜見平地区では複合施設整備事業が進んでいる。渡辺さんは、「新しい人がこの地に来て、交流できると思うと楽しみ」と変化を前向きに捉えている。街の装いが変わってもこの小さな社交場は変わらずに、温かく人を迎え入れてくれそうだ。
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