元教師の西岡正樹さん(64)=東海岸北在住=が、昨年5月から今年3月にかけて全国の「へき地にある小学校・小中学校」を巡った。
西岡さんは30年間、市内の公立小学校で教師をした後、延べ4年間にわたり世界60数カ国をバイクで旅してきた。昨年「今度は日本を隅々まで旅したい」と考える中で抱いた「他者と関わり合い学ぶ姿が『へき地校』に残されているのでは」という思いをその目で確かめようと、全国を巡ることを決めた。
へき地校は全国に2000校ほどあり、所在する地域の状況に応じて1〜5級に等級分けされている。西岡さんは、より等級の高い学校を回ることにし、相棒の「スーパーカブ100」に必要最低限の荷物を積み、茅ヶ崎を出発。民宿やテントに寝泊まりしながら太平洋側を北上し、反時計回りに全国を行脚。離島にも立ち寄った。旅中は、西岡さんに資金援助を行った友人ら「サポーター」や教え子たちに、ブログやSNSを通じて状況を発信し続けた。
へき地校のない大阪府と、大雪のため断念した岐阜県を除いた45都道府県を旅して巡った65校―。総走行距離約1万4800Kmの日本一周を終え、3月上旬に茅ヶ崎へ帰還した西岡さん。「体験を通して、学校のあるべき姿を確かめることができた。多くの人や物に出会い楽しい旅になった」と話す。
人の温かさや現状触れる旅に
学校へは基本的に飛び込みで訪問。「30年間の教師経験を話すと相手の表情がほころび、受け入れてくれる学校が多かった。まだまだ日本は捨てたものじゃないと感じた」と振り返る。
北は北海道利尻島の仙法志(せんぽうし)小学校、南は沖縄県与那国島の久部良(くぶら)小学校まで、多種多様な学びのあり方を知った西岡さん。各学校ではフィールドワークを行い「徳島県の離島にある伊島小学校では校長先生や児童たちが総出で島を案内してくれた」と人の温かさにも触れ「郷土を愛する気持ちが、子どもの自尊感情を高めることを知った」という。
その反面「へき地校の子どもは、体力不足や肥満が問題となっている。野山を駆け回っているイメージは幻想」という現状も受け止めた。その理由は「スクールバスで通うため、学校と家の行き来のみになること。また、子どもの数が少ないので放課後に集まって外で遊ばず、家の中にいることが多いから」と話す西岡さん。それを解決しようと、地域住民が子どもの体力作りへの取り組みを行う様も間近に見聞きし「『地域』と『学校』は互いに必要とし合い成り立っていると実感した」。
予期せぬアクシデント自身の力に変えて
旅には初めての経験やアクシデントもあった。小学校の夏休み期間は「未経験のことで旅の資金を得よう」と、福井県の牧場に1カ月間住み込みで勤務。「力仕事が体に堪えたけれど、新鮮だった」
旅中に左目横のほくろが大きくなったため、9月に自身の出身地・北九州に辿り着いた際に病院を受診したところ「基底細胞癌」と診断された。現地で切除手術を伴う入院を経て約1カ月後に旅を再開。「友人や教え子からのメッセージが励みになった」と話し「この経験があったからこそ気持ちを切らさず、新鮮な思いで旅を続けられた」と笑顔を見せる。
今後は市内などで報告会を開き、今回の旅を伝えていく。西岡さんは「旅を通じて得たことを、次は実践に移したい。いつかへき地校で教師をしたいと思っている」と展望を語った。
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