真言宗の古刹・輪光寺(円蔵2238)の関光典(こうてん)住職(72)が、約5年の歳月をかけて一人で手作りした漆塗りの不動明王座像が完成した。5月21日には開眼供養が執り行われ、護摩壇に祀られている。
「これまでいただいた多くのご支援とご厚情に対し、少しでも恩返しできたのでは」。護摩壇に鎮座する不動明王座像を前に、関さんは柔らかく目を細める。
幼少期から絵を描くことが好きだった関さん。身近にあった漆に興味を持ち、高校卒業後は金沢美術工芸大学で漆芸を専攻した。「寺の跡取りとして葛藤もあった」と言うが、「好きな道に進みなさい」と背中を押してくれたのが、家族と檀家だった。
技術に磨きをかけるため、卒業後は東京芸大大学院で学んだ。修了後、寺の跡を継ぐため高野山(和歌山県)で修業し、その後は寺を手伝いながら漆芸家として活躍。50代半ばで本格的に寺を継ぐまで、活動を続けた。
技法は「脱活乾漆」
きっかけは10年前。護摩壇を新設することになり、手作りすることを決意した。「自分の寺の仏様を手作りしたら魅力的だと思いましたし、漆芸に未練もあったのでしょうね」とほほえむ。原寸大のイメージ図を描き、技法などの検討を重ね、制作に取り掛かった。
技法は、興福寺(奈良県)の国宝・阿修羅像と同じで、「挑戦したかった」という『脱活乾漆(だっかつかんしつ)』を採用。土で作った原型に麻布を漆で貼り重ね、中の土を取り除く技法で、時間も手間もかかることで知られる。
関さんは、寺の仕事の合間を縫って少しずつ制作。完成した像は、台座から炎の光背を含め約180cmで、「イメージ通りにできた。これも不動明王のお導きかもしれない」と話す。
コロナ収束願い込め
5年がかりの造仏の仕上げは、コロナ禍真っ只中だった。「力強い表情に、コロナ収束の願いを込めることができた」と振り返る。
檀家からも「素晴らしい出来」と声が届く。関さんは「たくさんの方に見に来ていただきたい」と話している。
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