茅ヶ崎・寒川 社会
公開日:2025.12.05
フリー校利用者へ補助広がる
県が今年度から支援制度
不登校になる児童・生徒の増加を受けて、民間団体や個人が運営する「フリースクール」に通う子どもが増えている。一方で公立学校などに比べて保護者の経済的な負担が大きいことから、授業料の一部を補助する制度を設ける自治体も現れている。神奈川県も今年度から、こうした市町村を財政的に支援する仕組みをスタートさせた。
増加続く不登校
文部科学省の調査によると2024年度、全国の小・中学校の不登校児童・生徒の数は35万3970人で、過去最多を更新した。10月29日に県が発表した「令和6年度神奈川県児童・生徒の問題行動・不登校調査」でも、昨年度の不登校児童・生徒数は公立小・中学校合計で2万4250人に上り、昨年度より621人増加している。
こうしたなか、新しい学びの場として注目されているのがフリースクールだ。はっきりとした定義はないものの、文科省のホームページでは「不登校の子どもに対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設」とされている。県内では神奈川県学校・フリースクール等連携協議会と連携している団体だけでも35ヵ所にのぼる。
一方で民間が運営するため、公立学校などと比較すると保護者の経済的な負担は大きい。15年に文部科学省が行った調査によれば月額利用料(授業料)の平均は約3万3千円。1〜5万円程度の施設が多いとされる。
コロナ禍中に小学生だった子どもが不登校になりフリースクールを利用したある保護者は「経済的負担もそうだが、送迎などが必要となって仕事を続けられなくなるなど、生活への影響は大きい」と話す。
3市で補助制度
独自に保護者を支援する自治体も増えている。鎌倉市は23年9月、フリースクールの授業料等の一部を補助する制度を導入した。
その後、海老名市が24年7月、相模原市も今年10月から同様の仕組みをスタートさせている。
こうした状況を受けて県は今年度、「神奈川県フリースクール等利用児童・生徒支援事業補助金」を創設した。
制度の最大の特徴は、フリースクール等に通う児童生徒の保護者を支援する事業を実施する「市町村」に対して県が財政補助を行うこと。
県担当者は「保護者や児童生徒により身近な市町村を支援することで、地域の実情に応じた支援ができる」とし、今年度は260人分3120万円の予算を確保した。
導入求める声も
現在、茅ヶ崎市、寒川町では同様の支援制度がなく、導入を求める声が上がり始めている。
茅ヶ崎市では9月に開催された市議会定例会に「茅ヶ崎市内の不登校の子どもたちの学びの保障に向けた取り組みについての陳情」など2件が文教常任委員会に提出され、採択された。
内容はフリースクールに通う子どもへの支援とともに、安心できる居場所の整備、多様な学びの場の確保を求めるもの。陳情を提出した菊地萌さん(茅ヶ崎市内で里山での居場所・学びの場づくりに取り組む『わわわのわ』代表)は「不登校になる子どもが増加し、家庭だけで子どもたちを支えることが難しくなっている。学校だけでなく、地域や社会全体で子どもを見守るとともに、学びを確保する仕組みがあれば」と話す。
支援制度について茅ヶ崎市は「他市の状況を見ながら調査研究をしているところ」とし、寒川町では「現状では不登校の件数について顕著な増加はなく、検討はしていない」としている。
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