居合道範士10段 小山 辰巳さん 岡崎在住 89歳
波乱万丈 居合の達人
○…大日本居合道連盟に所属する数ある流派の中で、全国に2人しかいない居合道10段保有者。剣道5段の腕前も持つ。「居合の祖」と言われる林崎甚助が開いた無双直伝英信流を修め、同流派の相談役を務める。無双直伝英信流は諸流派の大本となったとされる流派で、もう1人の10段保有者は同流派24代目宗家。今は月に数回、日曜日を利用して近所の岡崎公民館で教室を開き、指導を行っている。
○…生まれは岡山県。進学のため大阪に移り、就職先も見つけた。20歳で徴兵され満州に派兵されたことで、波乱万丈の人生を送ることになる。終戦後のシベリア抑留と、零下30℃〜40℃という過酷な環境下での生活と重労働。数年後、帰国するが会社は解体されており、自身も戦犯として公職追放を受け職を失ってしまった。「追放解除されて新しい会社に勤めるまでは色々な職を転々とした。不景気で給料を貰えなかったり、本当に大変だったよ」と当時の苦労を語る。
○…剣道の稽古前に見よう見まねで練習していた居合を本格的に始めたのは、シベリアからの帰国後。当時の20代目宗家に出会ったのがきっかけで門を叩き、指導を受けた。居合は鞘から刀剣を抜き、納刀に至るまでの所作を磨く古武道。無双直伝英信流の技は50にも及ぶ。「居合いは自分と向き合う武道。精進しなければ身につかない」と鋭い眼差しを見せる。
○…「居合を続けるには刀に惚れなきゃだめ」と、愛刀を見せる。凝った彫りが施された鍔に、柄にあつらえた獅子の彫り物。「凝り出すとキリがない」と笑いながらも、刀への愛着をのぞかせる。真剣を扱う以上は刀を怖がっていてはだめというのが持論。自身の教室でも、真剣での指導を行っている。「これからは若い人に前に出てもらわないと」と、次代を担う剣士の育成に励んでいる。
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