高齢化や後継者不足などで、農業や漁業の従事者は、全国的に年々減少傾向にある。これまで代々家族で営むのが漁業でも通例だった中、夢や理想を抱き、やりがいを求め、漁業の世界に飛び込む「新参者」がいる。平塚市の主な漁業である定置網漁の船を支える、新規就漁者を取材した。
今年2月に公表された最新の神奈川県の漁業センサス(2013年実施分)によると、県内の漁業経営体数は1157件で、5年間で約7%の減少を見せている。そんな中、唯一、経営体数が10年間増加し続けているのが、平塚市と大磯町だ。特に平塚市は、03年時点で6件だった経営体数が現在12件と、2倍に増加している。
平塚市の漁業を、大きく支えているのが新規就漁者だ。平塚市漁業協同組合によると、現在所属する約100人の組合員の約半数を占める。近年は特に、年齢を問わず、企業勤めからの転職者が多いという。平塚市での特徴は、新たに船を出すのではなく、既に操業している漁船の乗組員として参入している点だという。
特に新規就漁者が大きな力になっているのが、定置網漁だ。現在市内で2つある定置網漁業者の内、川長三晃丸(磯崎晴一船長)は、船長と息子の和洋さんを除く船員6人全てが新規就漁者だ。
同船は以前、青森からの出稼ぎ労働者を船員として雇っていたという。磯崎船長は「今のメンバーは、単に稼ぎを目的としているのではなく、海や漁業が好きで参入してきてくれた人ばかり。好きだけで仕事はできないが、何よりやる気が違うから」と笑顔で話す。
岩田秀樹さんは、現在25歳。小さい頃から釣りが好きで、将来の夢はずっと漁師だった。最初は反対した両親もその熱意に打たれ、背中を押してくれた。水産学校で学んだ後、川長三晃丸に乗り込み6年目。「学校で学んだことだけじゃ追いつかない。でも、自分の獲った魚が、日本の食卓に並ぶ、それを考えるとやる気が出るんです。この船に乗れて、漁師になって良かった」と話す。
元自動車整備士の山本浩輔さんは、2年前、大磯町で「海の男募集」の張り紙を発見。「これだ」とその場で電話連絡をし、漁業の世界に飛び込んだ。「辛くてやめる人もいますが、自分にとってこの直感は間違ってなかった。この仕事をしたら他の仕事はできない」と相好を崩す。
高野和明さんは、秦野市出身の元料理人。地産地消の良い食材を求める中で相模湾の海の幸に行き着き、自らその現場で修業することを決めた。「船に乗るばかりが仕事じゃない。驚くことばかり」と瞳を輝かせる。
血こそ繋がらないが、船に乗れば家族同然。船員も信頼厚く船長を「親方」と呼ぶ。
船長の息子、和洋さんは来年から石川県へ漁業修業に出向く。「皆がいなければ、船は動かせない。若者のやる気は力になるし、転職組のスキルはエンジン整備を含め色々役立つことばかり。少数精鋭ながら1人も欠かせない」と船員に笑顔を向ける。
現在市漁協では新規就漁者の斡旋などを行っている。問合せは【電話】0463・21・0146へ。
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