--昨年は、世界中が新型コロナ対応に追われました。1年を振り返っていかがでしょうか。
「当会議所も当初計画していた事業に着手できなかったものが多かったです。コロナ後の世界について『アフターコロナ』と『ポストコロナ』という言い方があります。時間的に過ぎ去った『アフター』ではなく、この体験を踏まえた先の『ポスト』という考えが大切ではないでしょうか。企業倒産やテレワークの普及などは、このコロナ禍が無くてもいずれ近い将来に起こったことだと思います。いま垣間見ている風景が未来の一部だとすれば、戻ろうとするのは意味がない。『来たるべき未来』に向け今できることをやっていく、という前向きな姿勢を持つべきでしょう」
--商工会議所の会員は、多くが中小規模の事業者です。コロナ禍でどのようなサポートをしていますか。
「最も大切なことは、会員企業がつぶれないこと。コロナ感染が拡大しだした昨年前半は、不測の事態の備えとして補助金や金融機関からの借入などを活用して『まず手元にお金を置きましょう』と訴えました。私も経営者のはしくれですが、倒産や廃業の原因は外部環境だけでなく経営者自身にある場合も多いように思います。経営者がきちんとした経営の知識や技術を持つことが大切だと自戒を込めて思います。会議所では、各種の支援や補助金メニューの情報提供とともに、研修等を通じて経営知識を学ぶ機会を提供しています」
--地域の主要産業「観光」もかつてないダメージを受けました。
「インバウンドはいまは0(ゼロ)で短期的視点では大きなロスです。一方で、観光に求められる価値は変わりつつあり、迎える側も『数』から『質』を追求する経営に方向転換すべきタイミングだと思います。日本の観光は、祝日や週末に集中してきましたが一番良いのは平準化すること。お客様はゆったりと過ごせ、これまでピークに合わせて人員や設備を持っていた事業者にとっても効率化が進められます」
--移住先で県西地域が注目されるなど明るい兆しもありあります。
「コロナのもう一つの教えは、今まで絶対できなかったことができたこと。テレワークなど新しいことにトライできるチャンスともいえます。来たるべき未来とはどういうものか?『SDGs』的なことをいえば、一例が循環型経済です。それは資源の循環利用を意味するサーキュラーエコノミーと、地域内の経済循環という2つの側面があります。再生可能エネルギーを地産地消することは、同時に地域でお金をまわすということにもなる。コロナで傷んだ経済の回復は、いろんなことを見直すきっかけにしなければいけない。僕は65歳。次の世代を考えたとき、彼ら彼女たちに『これからは君たちの時代なんだよ、これからは君たちが新しく創っていくんだよ』といいたい。今までの教科書は役に立たない。若者に新しい時代を前向きに歩んでもらいたい。そこまでの道は我々が作っておく責任があります」
--今年、計画している取り組みは。
「昨年末から『TOKYO2020タスクフォース』が動き出しました。オリンピック・パラリンピックを契機に、まちづくりにつながる取り組みを検討します。単なるスポーツイベントではなく、レガシーをこの地域に創っていきたい。観光では、定住人口、交流人口、最近は関係人口が注目されていますが、テレワークで短期に住んでもらうことも広い意味で観光といえるのではないでしょうか。時間やお金を使ってもらう人をいかに小田原・箱根に呼び込むか、新しい働き方ができる拠点を行政と連携して考えていきたい」
--今年は商工会議所の新会館(小田原市本町)がオープンします。
「当会議所は、移転して2月頭から活動できるよう準備しています。会館の正式オープンは4月予定です。会員のみなさんが気楽に過ごせるスペースを設けていますので、ぜひお立ち寄りいただき、情報交換や交流を図っていただきたい。新しい時代の商工会議所としてスタートしたいと思います」