アメリカ・ニューヨークの名門ピアノブランド「スタインウェイ」の最上級モデルを1時間、大ホールで自由に奏でる催しが、5月25日から27日の3日間、南足柄市文化会館大ホールで行われ30組が参加した。指定管理者のアクティオ(株)(東京都目黒区)が初めて企画した。
1人1枠60分で2千円、その価値はプライスレス―。3日間で30組を集めるこの企画には、4月19日の受付開始直後から予約が殺到し、5月を待たず満員となった。
試し弾きできるピアノはスタインウェイの最上級モデル「D―274」で、南足柄市が文化会館の開館に合わせて1992年に1254万円で購入した。14年にリニューアルした音響・照明設備と相まって、演者や観客などから高評価を得ている。
そんなピアノも、発表会やコンサートでの出番がなければ、長い1日を暗い舞台のピアノ庫でひっそりと過ごすだけ。「それではもったいない。個人では得難い環境を少しでも多くの人に体験してもらえないか」と、アクティオの職員が2年ほど前から企画を温めていた。
「手が震えた」
南足柄市壗下に住む会社員の男性(64)は、ピアノの手ほどきを受ける同僚と利用を申し込んだ。開始5分前に舞台袖にやってきた男性は「習い始めたばかり」と緊張気味に演奏を始め一音一音を確かめるように鍵盤に指をあてていた。体験を終えた男性は「初めは手が震えた。自宅のピアノとは全く違った。素晴らしい経験になった」と笑顔でホールを後にした。
小田原市の浅岡忍さん(33)は2人の姉の前で10曲を披露した。観客席の最前列でかたずをのみ見守った姉は「音の響きが素晴らしく聴き入ってしまった」とため息をついた。忍さんは「なかなかできない経験。手が震えたけど楽しく弾けた。次回もあるなら必ず申し込みたい」と話した。
「7万円と4千万円のピアノを弾き比べる番組をユーチューブで観て実際に確かめてみたかった」と申し込んだのは塚原に住む元会社員の男性(68)。定年後に音楽教室に通い始め、ペダルの操作を学ぶため講師から勧められて練習しているベートーヴェンの『月光』を奏で続け、「ペダルと鍵盤で弦をコントロールする感覚が指先から伝わってきた」と企画を絶賛した。ホールの公演にも変化を感じていて「本物の芸術に触れる機会が増えた。南足柄市民で良かった」とも話していた。
ほかにも音大を目指す中学生や小学生の家族、中高年の親子などもいた。「素敵な時間だった」と話す職員の表情も晴れ晴れとしていた。次回の開催は未定という。
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