はだのっ子 いま・みらい 教育寄稿第23回 志を持って生きたい 内藤 美彦
子供は、誰もが自分の将来に夢を描いています。夢がないようでしたら、夢を持つように仕向けるのが大人の役目です。夢を持つことは「教育とは夢を語ること」というように、人間形成の上でなくてはならない大切なものと言えます。
甲子園で、汗と土にまみれて白球を追う高校球児の真摯な姿が、野球少年の心を駆り立て、甲子園への夢を膨らませるのです。世界中の人から称賛されるノーベル賞受賞の報道に、科学者や学者への憧れを抱く多くの子供がいます。病気で苦しんでいた時、優しく接してくれた看護師と出合い、その道に進もうと思う子供もあるでしょう。
このように、夢は心がワクワクする感動体験によって、子供の心に芽生えます。そのために、たくさんのものを見、聞き、読み、体験しなければなりません。
テレビ番組「笑点」の大喜利に常連として出演している林家たい平という人がいます。彼は子供の頃から「人を幸せな気分にさせる人間になりたい」と思っていました。それには、教師が適していると、教師を目指して大学に入学したそうです。そんなある日、林家こん平の落語を聞きました。その時「笑いは人を幸せな気分にさせる」と雷に打たれたような衝撃を受けました。それがきっかけで、林家こん平に弟子入りしたということです(実際、笑いは生活のビタミン剤で、健康や脳の活性化に効果があると科学的に証明されています)。
夢は、人のためのものでなく、自分の名誉や地位、財産を目指すもので良いわけです。しかし、たい平の夢は「人を幸せな気持ちに」という他人のことへの思い、願いが根底にあります。同じ夢であっても、社会や多くの人のためになるものを「志」と呼ぶのです。自分の夢を一歩進めて、志としたいものです。
甲子園で活躍した菊池雄星は西武に入団の際「社会に貢献できる選手に」と、ワタミの会長は「人を想う心で仕事を」と言っています。企業の理念には「社会の発展向上」が多いです。これが志であり、自分の仕事への誇りも生じるのです。
誤解を恐れずに言えば、我身を捨てても公共のために尽すのが、真の志でしょう。政治家こそは、この志を持って欲しいと想います。
■プロフィール
横浜国立大学卒業。秦野市立小学校教諭。秦野市立本町小学校校長。秦野市教育委員会教育長を歴任。
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