秦野版 掲載号:2011年11月5日号
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はだのっ子 いま・みらい 教育寄稿第36回 それは私の喜びです 内藤 美彦

 「与える木」というロングセラーの絵本があります。作者はアメリカ人で、りんごの木とひとりの男のかかわりを描いたものです。

 「木に上り、りんごを食べる少年を見て、木は幸せでした」から始まります。そして、男の子が長じてお金を欲すると、りんごの実を売らせるのです。家を建てたくなれば、木の枝を使わせます。中年になって、船で遠くへ行くのを望むと、幹を切って船を造らせるのです。老人になった男が切り株になった木を訪ね、何もいらない、ゆっくり休みたいと言うと、切り株に男を休ませます。木は男に与えるたびに「幸せでした」と思う内容の話です。

 この話は、求めるだけの自分勝手な男への不満と与え続ける木の善意に甘やかしを感じます。でも、話の意図は、神の崇高な愛を木に例えたのでしょう。同時に、人に役立つことをすると、自分が幸せな気持ちになることを伝えたかったのだと思います。

 プロ野球「楽天」に岩隈久志という日本を代表する好投手がいます。彼は07年から1勝する毎に10万円寄付してきました。そのお金は、東南アジアの国で図書館や貯水施設になっています。家族や同僚に勧められて、しぶしぶ始めたのだそうです。やっているうちに、結果を出すこと(勝利投手になる)が、人々に元気や勇気を与えると思うと嬉しくなって、自分の為というより誰かの為に投げる喜びを知ったと述べています。

 東日本大震災の救援に赴いた消防救急隊員の話です。消防自動車で気仙沼へ急ぐ道で、周辺の人たちが車列に手を合わせ、お辞儀をしていました。その姿を見て、隊員の心は震えたのでした。「助ける」ということが、いかに尊い行為かを改めて認識したと語っていました。

 私たちも、些細なことで困っている人を手助けすることがあります。そうしてお礼を言われると「どういたしまして」と応じるのが普通です。それを英語では「プレジャー・イズ・マイン」とも言うそうです。直訳は「(お手伝いは)私の喜びなのです」となります。

 この言葉のように、親切や手助けは本質的には、自分を満足させる行為なのです。社会や人の為に役立つことをするのは、人間の生きがいであり、充実した人生を創ると思います。

■プロフィール

横浜国立大学卒業。秦野市立小学校教諭。秦野市立本町小学校校長。秦野市教育委員会教育長を歴任。
 

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