秦野 はだのっ子 いま・みらいコラム
公開日:2012.08.18
はだのっ子 いま・みらい
教育寄稿第46回
感動が生活を豊かに
内藤 美彦
羽生善治棋士が将棋界のタイトル81を41歳で獲得し、大山永世名人の80タイトルを抜く大記録をつくりました。将棋会では、この羽生世代が活躍していますが、ひとつ前の世代に谷川浩司という棋士がいます。現在、50歳ですが、21歳で名人になり、その最年少記録は今だに破られていません。
この谷川浩司の幼い頃の話です。床の間の花瓶に花が飾ってありました。それを見た浩司が「白い花が3本、赤い花が5本、黄色が2本、全部で10本」と言ったのです。それを聞いていた人たちは「なんと頭の良い子だろう」と驚きました。ところが、父親は「ものを正確に見ているが、花に対しての感じる心が見えないのは残念」と言ったそうです。幼いので、感動を言葉で表現できないでしょう。でも、喜びなどの感情が表情に出なかったのを気にしたのだと思います。
父親は、感動する心が人間性を培う上で重要な要素と認識していたのです。感動する心は、人の痛みも理解できる心でもあります。その後、父親は身の回りの美しいもの、素晴らしいものに、子供の前で「きれいだね」といった感動の気持ちをできるだけ多く言葉に出したそうです。
人の情緒は、自ずと育つものか、意図的に育てるものか、よく分かりません。でも、環境の影響が大きいとは言えそうです。日本人は自然への感受性が鋭いとよく言われます。それは、縄文の昔からの自然との共生の中で、四季の変化を通して育てられたのです。虫の声を雑音としか感じない民族と秋の侘しさ、冬の到来を感じる日本人との違いがそこにあります。
このように、情緒と環境とは深い関係があり、子供の情緒を育てる環境づくりが大切です。美しいもの、善なるものに接する機会を多くする必要があります。それは、自然や芸術作品だけでなく、人間の行為にも見出せるのです。伝記は人気がないですが、感動する生き方が多く発見できます。読んだり、聞かせたりしたいです。感動には生きる勇気を強める力もあります。
日常生活の些細なことに感動することを見出すのも楽しいです。江戸時代の歌人橘曙覧は「楽しみは 朝起き出でて 昨日まで なかりし花の 咲ける見る時」と詠んでいます。
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