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秦野 コラム鵜の目鷹の目

公開日:2015.12.10

vol.38
鵜の目鷹の目
秦野市元教育長東海大学講師 金子信夫

詩吟



 半世紀も前のことで恐縮ですが、高校漢文の授業で王維の「送元二使安西」(元二の安西に使いするを送る)という漢詩を勉強したことを思い出しました。内容は、異郷の地へ旅立つ友人との別れを惜しみ、酌み交わした酒をもう一杯と勧めて思いやる心情を詠んだものです。七言絶句の「塵(じん)」「新(しん)」「人(じん)」と韻を踏む工夫に感心するとともに、録音テープでその詩吟を聞いて何故か心が震えたのを覚えています。



 文字だけでは表すことができない情感を朗々と吟じる詩吟のインパクトを初めて知った瞬間だったと思います。理系に進んだ私ですが、以来漢文と中国・東洋史には興味があり、受験科目でもないのに真面目に勉強した程です。



 その後は特に詩吟と触れ合うこともありませんでしたが、就職して納会(宴会)の時に、興が乗ってくると大先輩が歌う「風林火山」で詩吟と再会しました。三橋美智也の名曲ですが、「疾(と)きことォ〜風の如くゥ〜」のあれです。最後の「動かざることォ〜ォ〜山のごとしィ〜!」を力強く吟じきった時の大先輩のなんとも誇らしげで得意満面の顔を見るたびに楽しい気分にさせられました。



 宴会の場以外で本格的な詩吟と出会う機会はありませんでしたが、近年、私の敬愛する先輩がその道で精進されていることを知り、改めて興味が湧いてきました。



 腹式呼吸やあの凛とした姿勢が心身の健康に良いことは言うまでもなく、独特の節回しによる抑揚や声の響きに、本人はもとより聞く人の五感を揺り動かす力があるのだと思います。脳細胞の活性化とストレス解消効果も大きいに違いありません。

 

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