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秦野版 公開:2024年11月29日 エリアトップへ

今に残る秦野の伝統行事 地域住民が現在に紡ぐ

文化

公開:2024年11月29日

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瓜生野百八松明で行われる勇壮な松明振り回し
瓜生野百八松明で行われる勇壮な松明振り回し

 秦野市には古くから伝わる伝統的な行事が数多く存在し、地域住民や保存会などの手で現在まで伝承されている。市の指定無形民俗文化財である瓜生野百八松明や鶴巻下部大山灯籠行事など地域住民が守り続けてきたこれらの行事は、伝統を紡ぐだけでなく地域の絆を深める役割も果たしてきた。一方で、伝える人が減り廃れつつあるものもある。ここでは、秦野に伝わるいくつかの行事を紹介する。

瓜生野百八松明(うりうのひゃくはったい)

 毎年、旧盆の8月14日に権現山の山頂から龍法寺まで火がついた直径30cm・長さ2〜3mほどの大松明を担いで山を下り、寺の門前で松明を振り回す勇壮な姿が見られる民俗行事。南矢名の瓜生野地域に伝わるもので、昭和50(1975)年に市指定無形民俗文化財に指定されている。

 五穀豊穣と悪疫退散を祈願する行事で、数百年あるいは江戸時代中期頃から続くとされる。以前は各家ごとに松明を作り参加していたが、現在は瓜生野百八松明保存会によって実施されている。

 県教育委員会発行「神奈川県の祭り・行事」によると、昔は「百ハタイ」(タイは手に持った火の意)と呼ばれ、盆の祖霊迎えであったとされている。また、秦野市史の別巻民俗編には、松明を百八の煩悩に見立て権現山山頂で焚き上げるという記述もある。

 瓜生野百八松明後は江戸時代から伝えられ昭和52(1977)年に市指定無形民俗文化財になった「瓜生野盆踊り」も実施される。これは瓜生野盆踊り保存会が実施しており、「手踊り」「ささら舟」「おっちょこちょいのちょい」が披露される。

下大槻百八炬火(ひゃくはったい)

 古くから水田耕作が盛んだった下大槻に伝わる伝統的な虫送りの行事。下大槻百八炬火保存会によって毎年8月14日に行われ、稲の害虫を追い払い五穀豊穣を祈願する目的がある。

 百八炬火の歴史は古く、平安時代の武士・斎藤別当実盛の伝説になぞらえられている。戦中・戦後の一時期は途絶えていたが地域住民によって50年ほど前に復活した。

 行事が始まるのは日没後、辺りが暗くなりかける頃。あぜ道に並べた煩悩の数にちなんだ108の藁束に火を灯し、稲の害虫を焼き払うと同時に地域住民の無病息災を祈り3基の神輿が練り歩く。その後、実盛を模した藁人形に火をつける。

 虫送りはかつて菖蒲や今泉でも行われていた。神奈川県下でもほぼその姿を消しているが、はだの歴史博物館によると伊勢原市や松田町、横浜市都筑区など一部地域で残っているという。

盆の辻

 先祖が里帰りをするための場所として、各家庭で作る「辻」。地域で呼び名が異なり、「神奈川県の祭り・行事」によると中井町・大井町・松田町では「盆の砂盛」の名称で伝わっている。

 「辻」は祭壇のような壇で、竹を組んで作る。最近は竹が手に入りにくくなったことから、箱(木枠)を使っている家もある。また、砂だけを盛る家もあるという。

 平成23(2011)年に市内の郷土史研究グループが行った調査によると時代の流れとともになくなりつつあり、かつて子どもの仕事だった盆の辻作りも今ではほぼ大人が行っている。また、以前は公民館の講座として行われていた体験会もなくなってしまった。

 現在は菩提在住の農家・古谷昇さんがマックスバリュ秦野渋沢店で、お盆の時期に辻の展示を行っている。

鶴巻下部(しもぶ)大山灯籠行事

 「夏山」の期間(旧暦6月27日〜7月17日)に灯籠を組み立て、大山詣りに向かう旅人の夜道を照らす灯明を灯す行事。地域住民の手で240年以上受け継がれ、平成27(2015)年には市の指定無形民俗文化財になっている。

 この行事を継承しているのは鶴巻下部大山灯籠保存会。鶴巻下部の灯籠は常夜灯ではなく、毎年7月25日に組み立てを行い、8月18日に解体する。これは神奈川県以外の東京都や埼玉県でも見られるという。

 鶴巻下部では市内や近隣周辺地域の大山灯籠には見られない覆屋も組み立てるが、竿部には明和6(1769)年建立、文政5(1822)年再建と刻まれ、大山詣りが盛んだった江戸時代中期から後期には行われていたと考えられている。

石売り

 「どんど焼き」や「道祖神祭」の中で行われる小正月の行事で、西大竹の東町(あずまちょう)地区と開戸町地区で実施されている。大将を中心とした小学生男子がリヤカーを引いて各家を回り、道祖神石塔や五輪塔、手作りのお札を売り歩く。

 この行事は、子どもたちの無病息災を願うためのもので、明治時代中頃から始まったとされている。石を買うと子どもに病気や災いが起きないといわれ、子どもたちは各家庭のお飾りを回収しながらご利益があるといわれる道祖神まわりの石を売る。

 石は大きさによって値段が決まっており、売り上げはお札づくりなどの経費や、子どもたちの小遣いになる。売った石は、どんど焼き後に回収され元の場所に戻される。近年では少子化の影響で、中学生が参加することもある。

あくまっぱらい

 江戸時代から続く伝統的な小正月の行事。いくつかの地区に伝わる道祖神祭の別の呼び名で、市内では横野、堀西、菖蒲で行われており無病息災と家内安全を願い地域の家々を回る。

 ▽横野地区/地区の小学5年生から中学生が最年長の大将を中心に、獅子頭をかぶり太鼓を鳴らしながら「舞い込め」の掛け声とともに約200軒をお払いして回る。昭和37(1962)年頃まで青年団によって行われていたが10年ほど途絶え、昭和50(1975)年頃に地元子ども会の手で再開した。

 ▽堀西/波多川子ども会の幼稚園児から中学生が獅子頭を持ち、約200軒の家の玄関先などを回り「あくまっぱらい」と大声で唱える。昭和30年代まで青年会が主催し、4〜5年ほど途絶えたものを子ども会が引継ぎ再開した。

 ▽菖蒲/下東地区の小・中学生の男子が最年長の大将を中心に、獅子頭や御幣を持ちひょっとこの面をかぶり約150軒を回る。玄関先などで「あくまっぱらい」と大声で唱え、手作りの札を配る。

下大槻百八炬火の様子
下大槻百八炬火の様子
マックスバリュに展示された辻
マックスバリュに展示された辻
組み立てられた大山灯籠
組み立てられた大山灯籠
リヤカーを引いて石売りを行う子どもたち
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あくまっぱらいで各家を巡回
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