青葉区はご存じのように東京急行電鉄による多摩田園都市開発によって大きく変貌を遂げた街である。私が越してきた1980年代には、代々この地で暮らしてきた旧住民の方と、開発が始まると同時に移住してきた新住民の方の間には目に見えない壁があり、厳然たる住み分けがされていた。
ところが、お調子者な性格が気に入られたのか、図々しいまでの好奇心に圧倒されたのか、新住民になりたてにもかかわらず、旧住民=地主の皆さんにはずいぶんと可愛がってもらった。採れたての野菜をいただいたり、祭りに連れて行ってもらったり…。なにより楽しかったのは昔の暮らしについて話を聞くこと。多摩弁、武州弁と呼ばれる独特の方言が、旅へ誘(いざな)う線路のリズムのように心地よく、開発される以前の田園風景へとタイムスリップできた。
そのリズムの一つが促音便訛り。「落ちる」を「落っこちる」。「歩いていく」を「歩ってく」。「散らかす」は「おっちらげ」で「広げる」は「おっぴろげ」など、小さな「つ」が入ることでよりリアルにイメージできる。さすがに「おっぺす」「ぼっこす」と聞いたときには「外国語か?」と思って聞き返していたが(注・おっぺす=押す、ぼっこす=壊す)。こうした促音便に「べえ」「だんべえ」という関東地方で広く使われている方言が入ったりしたらもう完璧。心揺さぶられずにはいられない。
「青葉区の歴史あれかしお祭りの人ごみの中にそを聴きにゆく」
歴史探偵の活力の源泉はそこにあったのだ。人生は山あり谷あり。理不尽な仕打ちや裏切りでたとえ心がぼっこされても、地域のために頑張っていれば必ず誰かが背中をおっぺして応援してくれる。
さ、頑張んべえ!前に向かって歩ってくべえ!
(つづく)
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