「空手の世界大会でチャンピオンになりたい」。幼いころから抱いてきたその夢が、現実のものになろうとしていた。残り1秒、その瞬間までは――。
港南区日野に拠点を置く国際尚武館空手道連盟の指導者として、栄スポーツセンターやいのやま幼稚園空手クラブ(上之町)などで子どもたちに空手を教えている宗像真央さん(24)。
4月、宗像さんはシドニーで開催されたオーストラリア空手道連盟主催の国際大会で3年振りに現役復帰し、初日の女子68キロ級と2日目の無差別級に出場した。初日の68キロ級は順調に勝ち進み、決勝の舞台に。対戦相手は、空手新興国の中国代表選手。2分1本勝負の戦いが始まった。
試合序盤は拮抗した展開が続いた。次第に優勢となりポイントのリードを広げていくと、相手選手はなりふり構わず攻撃を仕掛けてくるように。それでも残り数秒で6対4とリード。「勝ったかなという気持ちはあった」と素直に振り返る。コーチの内海亨斗さんも「勝ったと思った」まさにその瞬間残り1秒、相手選手のハイキックが決まる。6対7。世界王者が、夢が、あとわずかのところで逃げて行った。試合後、悔しさで涙が止まらなかった。翌日、2日目の無差別級は「試合内容が良くなくて」5位入賞だった。
今後は後進の育成に
空手を通じて、あいさつや礼儀、感謝する気持ちなど、さまざまなことを学んだという。「今後は指導者として、空手を通じて得た経験を伝えていきたい」と晴れやかな表情で話す。
今回、現役復帰したのは夢を叶える最後のチャンスという以上に、「諦めなければ夢は叶うということを子どもたちに伝えたかったから」であり、「大人が身体を張って1つのことに挑戦する姿を見せたかったから」でもある。
学生時代、試合は自分のためのものだった。今大会に向け練習していた半年間、子どもたちや保護者の応援は日増しに大きくなっていき、その接し方にも変化を感じた。周囲の期待を感じていたからこそ、今回は応援してくれる人のために試合に臨んだ。「本当に、びっくりするくらい応援してくれた。感謝の気持ちでいっぱい」と振り返る。
5月に行われた帰国報告会と引退式には、300人が集まり「いい区切りになった」と話す。「今は選手より指導者に切り替わっている」。その真っ直ぐな瞳は、すでに未来を見据えている。
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