物語でめぐる金沢 第三章 『横浜殺人事件』(内田康夫著 角川書店)文・協力/金沢図書館
――称名寺は京浜急行「金沢八景」駅で下車、東へ徒歩十分ほど行ったところにある。創建は十三世紀の中ごろといわれる。背後には三つの小高い山(金沢山、稲荷山、日向山)が尾根で結ばれ、屏風のように寺域を囲っている。尾根のピーク・金沢山の頂上にある八角堂。その中で男が死んでいた――。名探偵・浅見光彦シリーズ第五十一作目の事件の第一現場の描写です。この作品には、称名寺の描写・金沢八景の由来・西柴の宅地開発後の様子などが出てきます。西柴については「小柴という、かつての漁村の近くで、山みたいなところだったのを西武が開発して、大規模な住宅団地になったところです」「現代風の洒落た住宅が整然と並んでましてね、称名寺の裏山を境に、まったく異質の風景があるんですねえ。」と登場人物に言わせています。開発が進んでいる周囲との対照的な、その「箱庭のような」印象と「地理的条件がストーリーの重要な骨格を創り出すことになった」と強く触発されたことが巻末の自作解説からうかがえます。
また、八角堂と言えば、金沢に偉大な功績を残し、2013年に生誕150年を迎えた大橋新太郎氏が1935年に建立し、百観音巡拝の石仏を寄進したことが知られています。03年刊行の光文社”内田康夫旅情ミステリー愛蔵版シリーズ”では、事件の舞台を訪ねてみたい方のための旅ガイドが付いています。
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