泥亀新田を造成した永島家最後の当主・永島加年男(かねお)さん(享年78)の遺稿をまとめた「泥亀永島家の歴史」=写真下=が命日の7月8日、発行された。同日は龍華寺(洲崎町)で追善供養を兼ねた出版祝賀会を開催。故人の悲願であった本の完成を墓前に報告した。
泥亀新田は永島家初代の祐伯(すけのり)が1668(寛文8)年から金沢の海岸部に造成したのが始まり。第9代忠篤まで約180年の歳月をかけて完成された。
本著は第16代永島家当主の加年男さんが永島家の家譜や郷土の歴史書などの資料を根気よく調べて書いた遺稿に、年表や写真、手紙を付加し約400ページにまとめた。2008年に没した加年男さんの「家史を残したい」という強い遺志を受け継いだ遺族や地元郷土史家、神奈川県立金沢文庫、龍華寺などは「永島加年男遺稿集刊行会」を発足させ、発行にこぎ着けた。
私財をなげうって行った事業、天災や高潮、地震などによる決壊、地域住民の異議申し立て――泥亀新田にまつわる永島家の様々な苦難が記されている。
「こつこつ研究をなされてきた成果。感動ものです」と話すのは金沢文庫の西岡芳文さん。中区の吉田新田と並ぶ、横浜市内の大規模新田でありながら、泥亀新田や泥亀永島家の研究者や本は乏しく、貴重な資料になるという。「家譜や系図をたどり繋ぎ合わせて、ひとつの歴史にするのは大変な作業だったはず。誰にでも出来ることではない」とその業績を評価する。
歴史伝える使命燃やし
西岡さんは「永島家最後の生き残りとして、歴史を残さなければという義務感が強くあったのでは」と加年男さんの心中を推察する。2001年に西岡さんに宛てた手紙には、「当家生い立ちの事など不確かなままで(中略)思い立って昨年秋頃より家譜探索にかかりました」と調査開始の動機を記している。
郷土史研究家の酒井宣子さんは、生前の加年男さんから未完成の原稿を託されていたという。「穏やかな方だったが、病気で(本が)完成できないことを暴れるほど悔やんでいたと聞きました」と話す。手元に残された原稿を「何とか本にしないと」という思いをより強くしたという。
同著は1000円(税込)で永島家の菩提寺・龍華寺(【電話】045・701・6705)で取り扱っている。また希望者には送料180円で郵送する。
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