横浜高校(能見台通)は7月28日、第97回全国高等学校野球選手権神奈川大会の決勝で東海大学付属相模高校に0対9で敗れ、渡辺元智監督(70)最後の夏を甲子園での胴上げで飾ることはできなかった。後任は、教え子の平田徹部長(32)。渡辺監督も終身名誉監督としてチームを支える予定だ。
慣れ親しんだ横浜スタジアムが、半世紀近くに渡った指導者生活の幕引きの舞台になった。9回裏、最後の攻撃を控えた円陣。「これが高校野球だ。諦めれば秋からの横浜高校はないぞ」――選手にかけた言葉は未来を向いていた。「栄光より挫折、勝利より敗北と言い続けてきた。甲子園は大きな代償だが、この経験を糧に次に進めば良い」。最後まで選手の成長を一心に思った。
準々決勝、準決勝と、神がかり的といわれるほどの逆転勝ちで、ノーシードから登りつめた横浜ナイン。「例年にない熱い戦いで、選手が勝利をプレゼントしようとやってくれた。感謝しています」。試合後、報道陣を前に穏やかな笑顔を見せた。「高校野球は人生そのもの。多くの人脈、選手に恵まれた。家族の支えもあり、最高の幸せ者だった」
長らくしのぎを削った東海大相模。指導者の道を歩み出した当初から追いかけ、そして追われた最大の宿敵だ。「最後こういう形で負けたというのは、平田たちの再出発には良かったかな」
記者会見場に現れた東海大相模・門馬敬治監督の目には涙が。「相模だけの野球じゃないぞ、神奈川の野球だぞ」。固く握手を交わすと、そんな言葉が漏れた。「甲子園にいった監督同士が仲良くし、皆で神奈川を盛り上げていかないと。それがせめてもの恩返し」
一時代を築いた指揮官
「お疲れ様でした」「ありがとう」――試合後、スタジアムは3万人の大観衆からの鳴り止まない拍手で包まれた。教え子最後の主将となった相川天河選手は「OBや皆の気持ちも背負って戦ってきた。監督さんを甲子園に連れていきたかった」と悔しさをにじませる。甲子園で胴上げするという目標に向かい、選手の心は一つだったという。横浜高校の誇りを持とうと、仲間を励まし続けたのは監督の教えがあってこそ。「生きていく中で大事なことを教えてもらった」。監督を宙に押し上げた選手の手には、感謝の思いが込められている。
「不屈の闘将」と称えるのは、飲食店を営む渡辺英行さん(66)。35年前に能見台に店を構えて以来、球場や練習場で応援してきた。監督や選手も度々来店し交流を深めた。「野球の神様が、半世紀頑張ったご褒美に決勝の舞台を用意してくれたのでは」と涙ぐむ。「感動のプレーは数知れない。活力をもらった」。平田新監督と同世代という息子も、横浜野球と共に育った。高校では同じ主将として切磋琢磨してきたという。今後の横浜を「もちろん応援したい。強い横浜が帰ってくる」と信じている。
バトンを託された平田新監督は「10年間そばで見て、四六時中選手や野球を考える情熱の人だと思っている。応援されるチームを作りたい」と決意を新たにした。
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