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公開日:2025.07.31
野庭住宅J街区
入札中止で建替延期
31年完成は後倒しへ
横浜市はこのほど、建て替え計画が進む市営野庭住宅J街区について、入札に参加できる全てのグループが辞退したと発表した。現在、再入札に向けた検討が行われているが、2031年に予定されていた完成は後ろ倒しになる公算が高まった。
上永谷駅徒歩圏内のゆりの木通り沿いにあるJ街区は12棟の建物から成り、総世帯数は380。1975年の完成から50年が経過し、老朽化が進んでいる。
当初予定では2026年に入居者の仮移転を開始し、その後解体と新設工事。2031年に再入居というスケジュールが計画されていた。これに向け市は今年1月、予定価格約144億円で入札を公告。複数の企業グループから参加申請があり、通過したグループが入札に向け準備を進めていた。しかし、7月4日までに全てのグループが辞退届を提出したことで入札は中止となり、当初計画通りに工事が行えないことが確実となった。
市担当者は「今後聞き取りを行うため、辞退理由は現時点で不明」と説明するが、物価の高騰などから、予定価格での工事が難しいと判断されたことが考えられる。再入札に向け、発注内容の変更や予定価格の引き上げを行うかは未定。
野庭住宅は全棟の建て替え計画があり、計画は長期に渡る。野庭住宅・野庭団地未来につなぐ会の黒田祐輔会長は「長い計画なので、多少こうした問題は仕方ないと感じる」と入札中止に理解を示した。
リスクが費用に反映か
公共工事は従来、設計、建設、維持管理など事業の段階ごとに発注先を決定する。しかし今回、市は市営住宅の建て替え工事としては初めて、全ての事業を一括して一つのグループに発注する「PFI方式」を採用した。この方式はコスト削減や時間短縮に有効。また、グループが入札時に工事の詳細や工法を提案し、それを市が評価した上で発注先を決めるため、民間のノウハウを利用できるメリットもある。
一方、入札中止が発生するのがPFI方式のデメリットだ。従来方式では市が工事詳細を決めた上で入札を行うため、企業側は必要費用を正確に算出することができ、入札不調はあっても一度参加した後に辞退することはない。しかし、PFI方式では事業の全ての段階について、必要な経費を同時に見積もる必要があるため、費用は概算となる。物価高騰の状況で将来的な不安をリスクとして概算に含んだ結果、予定価格の範囲内では提案を行えないという事態が起こり得るのだ。
市はPFI方式で規模や条件の異なる別の2カ所の市営住宅の工事も同時に進めており、「(J街区の入札中止で)この方式が直ちに否定されるものではない」と説明する。方式の評価には事業の全てが終了してからの検証が必要であると話した。
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