中区の市立横浜吉田中学校(米盛司校長)など市内公立中学校の一部で取り入れられている英語教育の授業法「5ラウンドシステム」。同システムを導入する 中川西中学校(小林茂雄校長)=都筑区=が、実用英語技能検定(英検)を受検した全国中学校のなかで、3級以上の合格者数が最多となり19年度の文部科学大臣賞に輝くなど、同システムに注目が集まっている。
「5ラウンドシステム」とは、1年間で教科書の最初から最後までを5回繰り返す授業法。横浜市教育委員会教育課程推進室の西村秀之主任指導主事が12年に南高等学校附属中学校=港南区=開校時に発案した。
2カ月間で1周
通常の授業では、単元ごとに学習を進め1年間を通して教科書1冊が終了するが、同システムだと概ね2カ月間で教科書を1巡する。それを年間を通して5巡するため「5ラウンドシステム」と呼ばれ、教科書は単元全体でストーリー性があるものを使用する。1時限のなかでは、同システムを活用した学習が約30
分、「帯活動」と呼ばれる英語でのコミュニケーション力を高める活動が約20分の割合だ。
同システムでは、1巡目は教科書に登場する絵をみながらリスニングによる内容理解、2巡目で教科書本文をなぞりながらリスニングし音と文字の一致を確認。3巡目はストーリー内容を確認しながら初めて音読する。4巡目になると、教科書本文に空欄などを入れたワークシートを難易度別に4種類用意し個々の習熟度に応じて再度音読。最後の5巡目には教科書に登場する絵を見ながら生徒自ら考えた英語でストーリーを話す流れだ。
西村指導主事は「5回繰り返すことによって教科書からインプットされた情報をコミュニケーションを図る帯活動において英語でアウトプットすることで言語取得につながる」と説明し「それを実践してきた中川西中が文部科学大臣賞を受賞したのはとても嬉しいです」と話す。
積極的に会話も
横浜吉田中学校=中区羽衣町=は、全校生徒の約5割が外国籍または外国につながる生徒が在籍する。4年前から英語の授業で同システムを取り入れたことで、外国籍・外国につながる生徒と日本人の生徒とのコミュニケーションの発展にも寄与しているという。英語科の松本誠教諭は「英語を使って休み時間に会話する生徒も。5ラウンドを通じて基礎知識のインプットを行い、帯活動で積極的なコミュニケーションを図る活動が生きているのではないか」と分析する。
11月12日、中川西中学校の1年生は、同システムで4巡目を迎えていた。英語科主任の榎本由理子教諭が担当する授業では、英語でコミュニケーションを取るグループ活動を展開。榎本教諭も始まりから終わりまでほとんど日本語を使わず英語で授業を行った。
本文を暗記
前半では、帯活動として英語でコミュニケーション。見本の1文を榎本教諭が示し、生徒一人一人がアレンジして発表していく内容だ。30秒間、40秒間と時間を延ばすことで会話時間を増やすトライアルもあった。後半では、教科書の本文に空欄や並び替えなどがされているワークシートを活用し、ヒアリングと音読を実施した。「もう何回も授業でやったから本文は覚えています」とほとんど絵のみのシートをみて本文を音読する生徒が多くいた。
文科大臣賞に
中川西中学校はこのほど、英検を受検した全国の中学校のなかで、3級以上の合格者数が最多となり19年度の文部科学大臣賞に輝いた。文部科学省が発行する中学校などにおける「英語教育実施状況調査」では、生徒の英語力を測るものとして中学校3年生で英検3級を取得できる程度を基準としている。その基準に到達した生徒の割合が19年度の全国平均で44・6%のなか、中川西中では英検3級の取得率が81・3%という高い数値を示した。さらに準2級は43・8%(全国平均4・6%)、2級合格者も20人以上と優秀な成績を収めている。
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