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公開日:2025.08.21

南図書館
学童疎開の体験伝える
「一品香」元社長・田代さんが講演

  • 講演する田代さん

 横浜市南図書館で8月5日、戦争経験者である田代信太郎さん(90)=中区野毛町在住=による講演会が行われた。

 戦後80年にあわせて同館で行われているシリーズ企画「語り継ぐ戦争の記憶」の一環。田代さんは元祖横濱たんめんの店『横濱一品香』の元社長・会長で、現在は横浜歴史研究会に所属。横浜の歴史を後世に伝える活動を行っている。



 当時小学校(横浜国民学校)4年生で、集団疎開した田代さん。母と妹、弟2人は祖母の実家である足柄下郡に縁故疎開、中区真砂町で八百屋を営んでいた父は警防団員として残り、家族がバラバラになった。

 田代さんの疎開先は箱根の温泉旅館。「風呂に入れたのは幸運で楽しみの一つ」だったが、「朝はふりかけご飯に、夜は雑炊。細いサツマイモが3本だけだったことも。我慢の毎日でした」。慣れない集団生活の中、ノミやシラミの痒みや空腹に耐えた。自由時間にはカルタに興じたり、海軍兵学校の話や忠臣蔵の講談を夢中になって聞いたりしながら、家族と離れた寂しさや不安な気持ちを紛らわした。

 その後、田代さんはリヤカーで迎えに来た父と家族が疎開している足柄へ。道中、敵のP51の機銃掃射を避けるため、大木の陰に隠れながら向かった。敵が相模湾に上陸したら竹槍で戦うと言っていた祖母が「どうせ死ぬなら家族と一緒に」と呼び寄せたことを後から知った。ラジオの前で正座して玉音放送を聞いた時は「頭がぼーっとして、緊張が解けた。命は助かった」と安堵。一方「戦争に敗れた日本はどうなるのか」と不安が襲ったという。



 講演後には、参加者同士で感想や思いを語り合う場が設けられ、平和の尊さ、未来へ戦争の記憶をどう伝えていくべきかについて、多くの議論が交わされた。

 南図書館では8月31日(日)まで「横浜市と米軍基地」を開催中。接収の歴史から返還跡地のまちづくりまで、パネルや関連資料で紹介されている。

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