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鶴見区 人物風土記

公開日:2012.08.16

馬場花木園でサギソウを育てている
笠島 享史さん
北寺尾在住 77歳

サギソウ我が子のように



 ○…先月花をつけた馬場花木園のサギソウ。その世話をたった一人でしている園のボランティアだ。昨年は猛暑の炎天下で花芽が焼け上手く咲かないものが多かった。「今年は日よけの屋根を作って対策しているが、天気予報のチェックは毎日欠かせない」。冬は土の中でできる種を守るのも一苦労。「湿地の植物だから種を浅いところに作るでしょ。霜が降りると地中から種が持ち上がってしまう。だから寒い日はすだれをかけてやらないと」



 ○…サギソウとの出会いは10年ほど前のこと。勤めていたタクシー会社を退職し、ボランティアをしていた寺尾地域ケアプラザで、サギソウを趣味で育てていた利用者がいた。「毎年夏に他の人にも見せようと持ってきていて。みんな楽しみにしていた」。そんなある日、サギソウの世話を頼まれた。「もともと高齢で将来も育てられるか心配だったそうで。それまで園芸などやったことはなかったがダメにしてはもったいないと思い引き受けた」。最初は自宅で一鉢から始め、最終的には50鉢ほどを譲り受けると、花木園で育て始めた。初めて園でサギソウが花をつけると、かつての持ち主は「よくやってくれた」と話していたという。それからほどなくして、この世を去ってしまった。



 ○…持ち主の思いを引き継ぎ、愚直なまでにサギソウにのめりこんできた。その理由は自分でもよくわからないという。「『子どもを育てているようですね』なんて言われることもある。確かにそれはなきにしもあらずで。誰にも触って欲しくない気持ちもあって一人でやってる。それじゃいけないんだろうけど」。娘のことを思う父親のように、照れ笑いを浮かべる。



 ○…「今年は花と花の間がスカスカになってしまった。来年は花壇を花一杯にしたい」。また来年、いくつものサギソウが本物のサギのように飛び立つように。今日も人知れず小さな白い花を見守り続ける。

 

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