連載第一〇三六回 「岡本かの子と老妓」 高津物語
「年々に、わが悲しみは深くして、いよよ華やぐいのちなりけり」―この歌は岡本かの子晩年の小説『老妓妙』の主人公はもとより、そのままかの子の心境を端的に表している。
岡本一平によると、この短歌が先にできて、次に老妓のタイプと性格が発想され、作品への組み立てとなったらしい。
「この短歌が作品から離れても、かの子の心境を表しているのはそうした理由による。余命いくばくかの今日、来し方をふりかえり、人間として、女をとしての悲しみはいよよ深まる。その悲しみは一体どこから来るのか。悲しみと共に増す生の華やぎとは一体何か。悲しみとは老妓のいう「今までの生活にパッションとやらが起こらずに過ごされてきた」ことにあるのかもしれない」(『岡本かの子』福田清人編、清水書院)
「年々に、わが悲しみは深くして、いよよ華やぐいのちなりけり」―かの子自身華やぐ命を認めながら、それが故に苦悩したらしい。
人生への憂愁、あるがままの人生を、あるがままの自己を認めようと一度は決意したかの子ではあった。しかし、それでも生命に対するあくなきまでの執着は募った。生命の火はかくまでも執拗に人をして追及し、深く燃え続けるものなのだ。
老妓の生への執着が強ければ強いほど、老妓の生への真摯な態度と姿勢が読者に伝わってくる。老妓の最後まで、死を恐れることなく迎え入れようとする心の余裕は、生への強調と執着の強調にあり、生の大切に生きる姿勢だった。
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