連載第一〇六五回手描友禅、石渡弘信氏 高津物語
創立50周年を迎えた「NPO法人高津区文化協会」の副会長の一人である染色家の石渡弘信氏は、私の友人の一人だ。
同じ時期に「高津区文化協会」に入った関係で、いろいろと気が合う。
けれども、石渡さんが地元の川崎市立高津高校の卒業生だとは、近くにいながらついぞ知らなかった。
高津高校は、今年創立九十周年を迎えたばかりである。私も教育委員をしたり、総合学習の単元で溝口の話をしたりして大いに関係している学校であるから、石渡さんが高津高校の卒業生と知り余計親しくなった。
石渡さんは、通産省認定の伝統工芸士で、優れた技術技能を発揮している第一回「かわさきマイスター」で、手描友禅染の技法を中学卒業と同時に近くの大定工芸に入社し、デザイン学校でテキスタイル(織物一般)を学びながら手描友禅の修行に入った努力家である。
「もともと絵が好きで物を作る仕事をしたかったのですが、筆を持たせてもらえない期間が、一年くらいありました。今思うとそれが大事だったのですね。だから、初めて筆を持たせてもらった時は嬉しかった」。
十年の修行の後に職人として独り立ち。
繊細で優美な美しさを持つ手描き友禅は、一枚の着物に仕上がるまでに、二〇行程が必要だ。
図案を描き、拡大、白い生地に下図を写し取り滲まない様に防染糊で線描、そこに色を塗り蒸気で定着、再び模様部分に糊で防染、地染めをする。その後、もう一度蒸して糊を水で流し(友禅流し)金箔を入れ、彩色、そして刺繍、その間に三回着物の形に縫ってはほどき、仕上げまでに半年、気の遠い作業が続く。
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4月19日