麻生区の介護現場で働きながら世界王者を目指す元日本フライ級王者・黒田雅之選手(34)=川崎新田(登戸)=は9月18日、復帰戦を発表。11月12日に廣本彩刀選手(23)=角海老宝石=とスーパーフライ級で対戦することが決まった。プロボクサーと介護職の両輪で、夢を掲げて再始動している。
黒田選手の復帰戦は今年3月の予定だったが、コロナ禍で延期に。昨年5月のIBF世界戦に敗れて以来、1年半ぶりの実戦だ。「いつかチャンピオンベルトを(勤務先の)利用者の皆さんに見せたい」と意気込む。
3月から正社員に
黒田選手はこれまで、選手生活の傍らコンビニエンスストアでアルバイトを続けてきたが、今年3月に正社員として就職した。麻生区で訪問介護サービスや小規模多機能施設を運営する(株)SOERUTE(山上剛史社長)に勤務し、週5日で6時間、施設利用者の体操の指導や入浴介助などを担当。「以前より就業時間は長くなったが、練習時間はしっかり確保できている。お金のことも心配しないでボクシングに打ち込める環境になった」と手応えを話す。
世界戦に敗れて引退も考えていた昨年、現役続行へ背中を押してくれたのが、川崎市の「働き方改革モデル事業」だ。同事業に採用されたインターンシップを通じて、介護の現場を体験。「子どもから高齢者まで運動を通じて笑顔にしたい」と考えていた黒田選手にとって、介護は夢を実現できる場でもあった。
黒田選手の就職を仲介したのは、子育て中の母親やアスリートを企業に紹介し、多様な働き方を事業化するストーリー(株)(松尾実里社長/栗谷)。本人や新田渉世会長の要望を聞きながら、就職先と調整した。新田会長は「本当は競技でお金を稼いで生活できるのが一番だが、実現できるのはひと握り。今回のような働く環境も必要だと実感した」と、協力企業2社に感謝を示す。
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