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公開日:2023.11.17

菅在住八木惇一さん
精密板金加工で匠に
かわさきマイスター認定

  • 金属を切削する機械を操作する八木さん

  • 認定証を持つ八木さん

 川崎市は11月7日、最高峰の匠として市内在住・在勤の技術・技能職者を表彰する「かわさきマイスター」に、今年度は5人を認定したと発表した。多摩区からは、精密板金加工「(株)テイ.エス.エス」(菅3の11の37)代表取締役の八木惇一さん(79)=菅在住=が選ばれた。

 かわさきマイスターは、極めて優れた技術・技能で川崎市産業の発展や市民の生活を支える現役の職人に対して贈られる称号。卓越した技術の奨励や継承、後継者の育成を目的とする。1997年度の事業開始から、今年度の認定者を含めてこれまで80職種124人が選ばれており、多摩区では八木さんが14人目。

独自の金型を開発 

 「それほどすごい生き方をしてきたつもりはないが、振り返ってみればそれなりにやってきたのかな」。板金金型工として歩んできた自身の道のりをそう振り返る。

 福岡県で生まれ、戦後すぐ関西へ。小学2年から東京で育った。中学卒業後は定時制高校に通いながら金属プレス工に従事し技術を磨いた。プレスの基盤となる金型に魅力を感じてメーカーに勤めるも4社続けて倒産。だが金型への情熱は冷めず1973年、28歳の時に一念発起し稲城市でプレス金型製作を行う「八木製作所」を創業した。

 メーカー勤務時代から培った顧客からの信頼もあって業績を確保し、自ら製作した金型で板金加工も手がけた。1986年に(株)テイ.エス.エスを設立。精密板金加工にも業務を拡大した。94年にはマレーシアに渡り、現地工場も立ち上げた。

 何層もの薄い金型を組み合わせるオリジナルの積層板金金型を開発。部品仕様が定まらない新製品の開発や、量産試作段階で板金部品を素早く低コストで試作することを可能にした。中国の台頭などが背景にあり、零細企業が生きのびていくために差別化を迫られた。「できる範囲で一つ、と考えた積層板金金型が認められた」

 仕事は断らない。無理難題にも挑戦して乗り越えてきた。「逃げたらだめ。まだ完成していなくてもお客さんのところへ持って会いに行くと、相手がアイデアをくれたりするもの。ネバーギブアップだよ」と微笑む。

 自身は幼少期から工作が好きだったという。従業員には「好きこそものの上手なれ。ものづくりの楽しみを実感してほしい」と願う。「仕事は生きていく糧。難題を克服するのも自分が思い描いたことを現実のものにするのも楽しい。人生の一番のバックボーンだね」

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