サッカー普及に地元で37年 子どもたちの活動を支える加藤早苗さん(70)
地元の小学生らが所属する南百合丘サッカークラブに、区内でサッカーの普及に貢献してきた女性がいる。大きな試合があるたびに足を運び、子どもたちの活動を支えて37年。あさって9日(日)から開催される神奈川県少年サッカー選手権大会を前に、これまでの活動と、子どもたちへの思いを聞いた。
「地域で子どもたちの輪を作りたかった」
こう話すのは王禅寺西在住の加藤早苗さん(70歳)。加藤さんは浅草生まれの下町育ち。子どもの頃から近所付き合いの深い環境で育ち、近隣とも顔の見える付き合いをしてきた。
しかし昭和40年頃、現在の住まいに引っ越してくると新興住宅地で転入者も多く、近所の人の顔が分からないほど地域の関係が希薄であることに気が付いた。「息子の通っていた小学校では2年おきにクラス替えがあったが、子どもたちが互いに顔が分からないほど」。そんな状況を危惧し、何か交流できる機会をと考えていたところ、出会ったのが当時マイナースポーツであったサッカーだった。
協力者を探していると、地域のサッカー経験者らが子どもたちのために指導を申し出てくれた。加藤さんは、三男が通う幼稚園の同級生ら数人と整備の済んでいない造成地で練習を始めた。子どもたちのために奔走する日々が続く中、「南百合丘サッカークラブ」の代表として、練習場所の確保から水分補給の準備まで裏方として活動を支えるようになった。子どもの数も徐々に増え、わずか3ヵ月で50〜60人にまで急増。ピーク時には区内の各小学校から約270人が通うまでになった。
これまでに巣立った子どもは約1000人。中にはプロ選手として活躍する教え子もおり、その活躍を報じた新聞の切り抜きは加藤さんの日課になった。「プロとして活躍するのは嬉しい」
今も、試合前にはお手製のレモンのハチミツ漬けや、リンゴを手土産に応援に駆けつける。子どもたちのために奔走する母の姿を見て、いつしか息子たちも同じ道を歩み始めた。長男の加藤渉さんは川崎市サッカー協会の副理事長として活動する傍ら、南百合丘サッカークラブのコーチとして日々汗を流している。渉さんは話す。「実力を伸ばすより、子どもたち全員がサッカーを楽しめるように指導している。それが母の教えでもあった」。早苗さんは「これからも子どもたちのために活動していくのが願いです」と話している。
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