「多摩川アユ」念願の商品化 都内百貨店で販売
「香りがいい」と評判
清流を取り戻したシンボルの誕生――。多摩川のアユが商品化され、今月9日から日本橋三越本店で数量を限定して販売された。川崎河川漁協組合総代の山崎充哲さんが多摩川で獲った天然アユを自宅の一角で一夜干しに加工し、都内の水産小売業者に卸している。「香りがいい」と消費者の評判は上々のようだ。
「東京湾が安定してきた証拠。アユの遡上が増えたのは河口がよくなったから」と山崎さん。
高度成長期の多摩川は「死の川」とも言われ、魚が激減した時代があった。下水処理技術の向上や環境問題への意識の高まりから、かつての状態に比べて現在では大きく水質が向上しているという。
清流を取り戻したシンボルともいえるのが「天然アユ」。東京都の調査によると、平成2年頃から遡上数が増加し、今年は過去最高の遡上数を記録。国土交通省の調査によると、今年は220万尾の稚魚が遡上しているという。
「”水清ければ魚棲まず”という言葉がある。多摩川はコケが多く、アユの成長に適している。浄化作用と人間の生活のバランスが取れている」と山崎さん。
多摩川の下流は下水処理した水が多く含まれるため、水温が高く、アユの餌となるコケがよく育つのが特徴。ただ、内臓は腐りやすく、捕獲後すぐに冷やして開き干しにするため、加工は全て多摩川から近い山崎さんの自宅で行う。
多摩川のアユは江戸時代、将軍に献上されるほどの高級品だったという。山崎さんは「一夜干しにすることで生よりも香りが増して旨みが凝縮する。川崎の名産になるといい」と話す。
日本橋三越本店地下1階でこの一夜干しを販売する吉川水産株式会社の廣田憲司さんは「アユ独特の香りが強く、お客さんの評判はいい。丸ごと食べられるのもいいようだ。ただ、サイズにバラつきがあるのは課題」と話していた。
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