「KAWASAKIしんゆり映画祭」で、開催前に上映が見送られたドキュメンタリー映画「主戦場」が、最終日の11月4日に上映された。共催する川崎市が上映に対する懸念を示したことでラインナップから外された同作。映画祭側の対応に映画人や市民からは、表現の自由を問う抗議や批判が挙がっていた。
4日の「主戦場」上映が発表されたのは2日前の夜。上映当日は会場のアートセンター前に長蛇の列ができ、88の座席に対し約430枚の抽選券が配布された。抽選に参加した多摩区在住の女性は「元々見たい映画だったので地元で見られる機会に、と参加した。上映に向けて動いてくれてよかった」と話した。夜、上映に先立ち登壇したミキ・デザキ監督は「表現の自由の大勝利だと思っている」と語った。
慰安婦問題を扱う「主戦場」は、一部の出演者から上映禁止と損害賠償を提訴されている。
1995年に開始した同映画祭は、企画・運営を市民スタッフがボランティアで担う。上映だけにとどまらず、監督や俳優のトークショーや、バリアフリー上映などを行っている。25回目の今年は「のり越える想い」をテーマに、国や世代、性別、宗教を超えてつながる作品が選ばれていた。
市が懸念示す
同映画祭は今年6月から「主戦場」上映に向けて配給会社らとやり取りを進めてきたが、8月に川崎市が上映に対し「共催事業内で行うことが厳しい」と懸念を示した。その後も協議が重ねられたが、9月初旬に映画祭側から上映申込キャンセルが配給会社に伝えられた。上映見送りの件が明るみになると、2作品が映画祭の上映を取り下げ、出品する映画の監督や配給会社からも文書、上映時のトークイベントなどで抗議や批判が寄せられた。
自由に語る会契機に
10月30日には参加自由の討論会が行われ、市民や映画人が集まった。同映画祭の中山周治代表は「今まで内容に関して口を出さなかった市が難しいだろうと発言したことに、重みがあると理解した」とし、来場客の安全が確保できないことから上映を見送ったと説明。参加者からは映画祭や市の対応を非難する一方で「上映を実現してほしい」「警備に協力する」といった申し出もあった。
討論会後に映画祭スタッフ間で話し合いと投票が行われ、映画祭期間中の上映を決定。追加ボランティアも募集した。
映画祭最終日、「多方面からの援助があり安全性が確保できた」ことが上映決定の大きな要因だと語った中山代表。この日「主戦場」提訴側の人物も会場前に現れたが、大きな混乱はなかった。
「映画のため、市民ため」
事態に対し中山代表は「ここまで大きな問題になるとは思わず驚いている。上映にあたり大小さまざまな問題があったが、スタッフ一人ひとりが一生懸命に考えた」と語った。今後は「市には応援して下から支える立場を続けてもらいたい。いろいろな助言をいただき、映画のため、市民のため、より充実した活動をしたい」と話した。
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