「ベートーベンやショパンの顔は知っているよね。でもジョージ・ガーシュウィンの顔はあまり知られていないんだよね」「エジソンの蓄音機ができて、SPレコードやLPレコードが発明されるのはね…」と話が終わらない。
体系的に蓄積された豊富な知識を惜しみなく披露し、これまでの音楽とはちょっと違った、その音楽が持つ背景やその周辺のヒト・モノなどを教えてくれ、音楽の新たな魅力を気づかせてくれる相澤真さん(61)=白山在住。”でくのぼうマコト”の名前で、聴き知った曲に別の角度の情報を加えてくれ、曲の魅力を最大限引き出してくれる。そんなイベントが3月4日、カフェ『轍WADACHI』(百合丘1丁目)で行われた。
初開催の「轍ジャズレコードを聴く会」にはジャズやオーディオの愛好家ら十数人が集まり、ナビゲーターの相澤さんの語りとレコードならではのサウンドを楽しんだ。今回はひな祭りを意識して、女性ボーカル入門と題して、ニーナ・シモン、ジャニス・ジョプリン、ビリー・ホリディなど貴重なレコードに針を落とし16曲流した。
相澤さんは出版社に勤めていた45歳ごろに目に変調をきたし、2年後に資格を取るため盲学校に進んだ。「仕事が激務だったからね。気が付いたら目が見えなくなっていた。その時、やりたいことをやろうと思った。一つはあん摩マッサージの資格を取ること、もう一つは好きな音楽をやること」
5歳からピアノを始めたものの12歳で「天才には勝てない」とピアノを断念。幼少のころから祖父の蓄音機で江利チエミの「テネシーワルツ」を聴き、ロックバンド・ピンクフロイドに傾倒していった。
高校ではモダンジャズ研究会などにも興味を持ったが「自分が音楽をやるのが一番」と聖歌隊に入った。音楽に親しみながらも大学、就職と進むうちに音楽から遠ざかっていった。
盲学校を卒業し、改めてジャズと出会う。高校生の時に聴いていた曲でも、視力をほぼ失った今では感じ方が違った。「ジャズは抑圧された人々の音楽。これまでと違う環境になった自分にとって、ジャズは違うものになっていた。抑圧された人たちが感じたこととは何だろうとか、そういう部分にまで意識するようになった」という。
カフェ轍のマスター佐々木義典さんは「あふれるほとの知識。自分だけ聞いてるのはもったいない」と毎月第1水曜日に「轍ジャズレコードを聴く会」を開催(午後7時〜)。「スマホなどと違うレコードで音楽を聴くという体験を多くの人に知ってもらいたい」と話す。次回は4月1日。サクラのシーズンからワシントンの名を持つジャズメンの曲を特集する。
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